05年12月24日(土)「 葉脈標本 」

 薬局で「炭酸水素ナトリウム」を買った。ほんとうは「水酸化ナトリウム」が欲しかったのだが、薬剤師がわたしを怪しんだのか売ってくれなかった。一応劇薬扱いらしい。
「何に使うのかしら?」
「ほら、あの、植物のほら、脈を取るあれよ、ほら何て言ったかなあ、ハレヒレホラヒレ……」
「ウ〜ン、植物の脈はどこで取るのかしら? 手首は無いから脇の下かしら? あ、脇もないか」
「ウーッ貴様、おちょくってんのか小娘薬剤師! 叩っ切ってやる!」
「まあまあまあ、オジサン、葉脈標本はね時間はかかるけど炭酸水素ナトリウムでも大丈夫だから、落ち着いて落ち着いて」
 ク〜ッ! 人のことをトッチャンボウヤ扱いしやがって〜。しかもだ、その光浦靖子似の小娘薬剤師は最後には「バイバ〜イ」と言いやがったんだぜ。

 わたしが作ろうとしているものが「葉脈標本」という正式名称であり、かつ「炭酸水素ナトリウム」は「重曹」であることがわかったところでキャンプ場へ向かう。木々はもうすっかり葉を落し、なかなか適当なものは見つからなかったが、なんとか肉厚硬脈のものを探して鍋で煮始める。なんか料理でも作っている感じだ。妻は「カレーが食いたくなった、食いたい、食いたい」と騒いだ。
 炭酸水素ナトリウム(重曹)はフライパンで空炒りすると炭酸ナトリウムになるので、そうしてから水にとかすようにとWEBサイト等では書いてあるが空炒りしなくても直接熱湯にぶちこんでOKである。参考までに。

 木ツ葉を煮ている間、別のバーベキューコンロで炭火をおこし、小樽の荒木さんが送ってくれた「ホッケ」を焼く。荒木さんというのは小樽の高校の音楽の先生だ。遠い遠い昔「小林倫博」というシンガーソングライターのファンで、最近このホームぺージを偶然発見し、つい懐かしくなってメールをくれたのだ。わたしも嬉しくなって過去のレコードをCD4枚に焼いて送ったら、お礼にとホッケが届いた訳である。
「お礼なんて絶対要らないよ」と強く制したにもかかわらず、荒木さんはこれまた強く「何を言う!」と粋なことをしてくれたが、今は心から感謝している。というのは、今までわたしが食べていた「ホッケ」はなんだったんだろう? と思うぐらい味が違ったのだ。荒木さんの受け売りだが、関東近辺の人たちが普段口にしているのはおそらく「シマホッケ」であり、生物学的にもぜんぜん違う種類の魚らしいのだ。そんなことは“アッタリ前田のクラッカー・世界の常識”で、わたしが無知だっただけかもしれないが、とりあえずわたしは本物のホッケの美味さに開眼した……という訳なのだ。
「長生きはするものじゃなあ、バアさんや〜、カレーはまたこの次な」
 青空とあいまって小樽のホッケはさらに壮絶に美味く、わたしと妻は舌鼓を豪快に打ち鳴らした。サンキュー、Mr.荒木。

 木ッ葉もほどよく煮えたので冷たい水にさらし、歯ブラシでトントンとやさしくたたきながら柔らかくなった葉肉の部分を洗い落としてゆく。めんどくさいがやっていれば確実に完成に近づく作業なのでストレスはない。
 冬期閉鎖中のキャンプ場なので水道の出が悪く、残りは家でトントンすることにしてわたしは木々の脇の下に手を当ててをとって遊ぶ。「葉標本」作りのプロセスを詳しく書くつもりだったが、なんだか略のない話になってしまった。が、これでいいのだ。フィールドノートはかくのごとく今後も大いに節操なく々と続いていくわけである。
 今年もあと1週間で「」、もとい「幕」だ。

 


            




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最後はの5連発だぜ! クックックッ!
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