「 闇の弁護士 」

 ヒューザーの小島社長の態度は「やっぱりな」というものだった。顔を見れば分かることなので今さら驚きはしなかったが、証人喚問に関わる多くの人々が費やした多くの時間と経費を考えると、なんとももったいない。
 どことなくわたしが以前いた会社の上司にその顔が似ているので、テレビで見た途端に嫌なことを思い出して軽いめまいがした。PTSDだ。
 世の中に“裏の世界”もしくは“闇の世界”が存在するのはなんとなく分かってはいる。あくまで想像だが「そうなんだろうなあ」「きっとそういう世界もあるんだろうなあ」「そういう世界とは一生係わりたくないなあ」てな感覚だ。今の職場の仲間に早稲田大学出身で元“サラキンの取り立て屋”という人がいるが、借金を取り立てに行ってみると対象者が首を吊っていて舌が腹のあたりまで垂れ下がっていた話や、「目ん玉売れ・肝臓売れ」のオドシ文句なんかまだ序の口で、ちゃんと保険金が獲得できる自殺の方法などを債務者に強要する話などは迫力がありすぎて“嫌な感じ”である。取り立て屋の前は生命保険会社の敏腕営業マンであった、というのが笑えるのでまあ唯一救われる部分でもある。
 さて、ヒューザー小島は馬鹿な悪人だが、喚問の際にその後ろで色々と入れ知恵をしている補佐人(弁護士)というのは一体どういう人なのだろうか。弁護士というと“正義”とか“弱者”のために働くというイメージをわたしは抱いていたのだが、世の中どうやらそんな甘っちょろいものではないらしい。きっと悪人専門の弁護士というのがいるに違いない。だってそうでしょう? 昨日まで正義の味方をやっていたのに、いくら条件がいいからと言って今日は悪人のため、ってわけにはいかないはずなのだ。逆はさらに難しい。当然評価が下がる。とすれば、もう完璧に割り切って、というか悪に染まり切って“黒を白にすること”に燃えているやつがいてもおかしくはないのだ。黒を白にしたとなれば当然その実績は“悪の世界・闇の世界”では評判が立つ。あの弁護士なら金を積みさえすれば助かるぞ、となるはずだ。
 国選弁護士とは違うのだ、自分の意志で悪人サイドに付いて黒を白にしようとしているわけである。さすれば、そういうのは“悪”ではないのか、同罪なのではないのか、わたしは強く矛盾を感じるのだ。アメリカあたりでは医者も弁護士も免許の更新があるらしい。日本の状況はどうなっているのだろう。
 あまりにも露骨に“悪へ加担”及び“汚染した”弁護士というのは、担当した裁判の結果にかかわらず、社会的制裁・法的制裁を受けて当然だとは思うのだがどうなんだろう。
 ヒューザー小島の後ろにいた弁護士は、小島と同系列の顔をしていた。いや、小島よりさらに深い闇に潜む人間の顔をしていた。闇は顔に出るのだ。  

 
 


           





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