石井明美に是非ここでライブをやってもらいたい、と思うのだった。
05年8月19日(金)「 峠でチャチャチャ  」

 8月10日が休みだったので、実はそれに合わせてヤフーオークション で「野点セット」を落札してあったのだった。椀と茶せんと缶とさじ、袋まで付いて激安¥2000だ。おもちゃのようなものである。でもいいのだ、バイクの振動でいつ壊れるかもしれないし(デジタルビデオ、カメラ、CDウォークマン等色々壊した)、すぐに飽きそうな気がしないでもない。茶が立てられればそれでいいのだ。
 計画では10日の午前中にそれが届き、午後からはちょっと遠出してどこか屋外で野点をするつもりであったのだが、待てど暮らせどブツが届かない。結局夕方の6時すぎに届いたのでその日は実現せず、しかたが無いので家で妻と「茶道ごっこ」をして遊んだ。
「けっこうなお手前でございました利休殿、ようかんも美味しいですな」
 最近妻もなかなか馬鹿だ、惚れ直した。しかし5盃は飲みすぎというものである。ようかんを食いたかっただけかも知れない。

 16日に徹夜明けで仕事から戻ると、今日こそ「野点セット」を持って山に行くぞ! と意気込んでいるところに大地震、前日までの大雨でゆるんだ山がいつ崩れるとも限らない。
「野点をしようと山にくりだした中年男性、土砂に呑まれ行方不明、残されたカブと粗末な茶器……」なんてことになったら恥ずかしいので中止した。

 そして、やっと今日になった。「私が写真を撮ってやるよ」と娘が同行することになった。
 飯能市と名栗村が合併する(した?)という話を聞いたので、気になって行ってみることにした。夏休みの子供たちで混んでいそうなのは分かっていたが、バイクならスリ抜けができる。それに何と言っても、日向と日陰の風の温度差を感じれる“夏のバイクでの山道走行”の魅力は捨てがたい。あの世まで持って行きたい(?)快楽だ。
「茶を立てるなら絶対ここだ!」と思っていた名も無い峠に到着、記念すべき“野点初陣”である。あたりまえだが、なかなか真平らな場所がないので苦労した。湯は持参のもので今回は我慢、芸能人は歯が命、アウトドアは手際が命だ。それにわたしのは茶道じゃないから作法はない、遠き山々を眺めながら心静かに抹茶を飲むだけだ。仕上げには「チャチャチャ」を踊る。

 せっかくここまで来たのだから、と娘を「正丸峠」越えに挑戦させる。娘のバイクはHONDAズーマー、最近の50CCはパワーがあるので登り坂では何度も追い抜かれる。登りが苦にならなければ峠道ほど楽しいものはない。嬉々としている。
「人生の峠道も登り下りが激しいんですぜ、娘さんよう」な〜んてアホなことを言ってみようかと思っている内に追い越して行った。
 峠の茶屋でところてんと味噌田楽を食す。そこで出された茶が抹茶入りでこれもなかなかうまかった。口の中に清涼感が広がった。
「峠でチャチャチャ」は単なるわたしの思いつきではなくて、日本人の長い歴史に培われた由緒ある習慣なのだ、と勝手に確信した。
「石井明美がここでライブをやると本物の“峠でチャチャチャ”だな!」
 超受けると思ったわたしの駄洒落に、娘は「誰それ?」と言ってさっさと先に下って行った。
「峠でチェッチェッチェッ!」になってしまったじゃないか。




             




 
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