キューバの選手はイチゴ食い放題
2009年3月19日(木) 「 イチゴ園でキューバ戦 」

裏山に野バラを採りに行く。庭の片隅に植えたいと思ったからだ。
妻がバラの栽培に凝っていて、バラは嫌になるぐらい種類も数もあるのだけれど、わたしは庭の自分エリア(隅の方にちょっとだけ)に白い小さな茨の花を咲かせたかった。

野バラを無事採取したあと、わたしが見つけたさまざまな場所を案内して回る。わたしは普段バイクでロケハンを繰り返しているので、より細かくどこどこにどんな花が咲いている等つかんでいるのだ。辛夷(こぶし)の花を所望されたが、時期的にまだ少し早かった。

山の中を2時間ほど走り回り麓に下りてきた。途中道が狭すぎて通れず、車を何度か迂回させるようなトラブルが幾度となくあり、予定以上に時間を食ってしまったのだ。
「イチゴが食べたいわね」ビニールハウスを遠くに見つけて妻が言った。
「あのビニールハウスは確かにイチゴ園だよ。12〜13年ぐらい前にみんなで1度来ている……わかる? 覚えてない?」
「……ああそうだ、ここだねえ。思い出した。思い出した」
ハウスに近づいてゆく車と同じスピードで、妻は遠い記憶をよみがえらせているようだった。
それはわたしの父が突然死に、ひとり残された母を鹿児島から千葉へ引き連れてきた直後だっただろうか。何を言っても、何をしても悲しみが支配している時間の中で、大箱で買ってきたイチゴの甘い香りだけが母の部屋で浮いていた。

店の中ではテレビでWBCのキューバ戦をやっていた。オカミが言った。
「今ねイチゴ無いんだけど、今ね主人が摘みに行ってるんだけど、待ってられれば買えるんだけど?」
「どのくらいでしょう?」
「もうすぐよ、もうすぐよ。摘みにいってもう1時間は経つからね。野球でも観てなさいよ!」
オカミのキャラクターはとても好ましかった。遠慮のえの字も感じることなくわたしたちは椅子に座った。ちょっとハイキーな眩しい部屋で、液晶テレビはボンヤリと写っていた。目を細めて画面を見つめ、点差を知ってわたしたち夫婦は歓声をあげた。
「オーッ!勝ってんじゃん! 3−0だよ」

ご主人がイチゴを籠いっぱいにして戻ってきたのは、それから15分後だった。オマケをたくさん付けて箱詰めが済み、ジャムと梅干も購入、会計もきっちり済ませたが、妻とわたしがそのイチゴ園を去ったのはそれからさらに1時間後であった。
実は……、昨日韓国に負けて背水の陣での今日のキューバ戦、2人とも家ではじっと観ていられなくて出掛けてきたのであった。
「またおいで、おたくらご夫婦はおもしろいわあ!」
あまり嬉しくはなかったが「ゲンを担いで次の準決勝もここで観ようか」とわたしは少し真面目に考えた。




              




mk

自家製ジャムと梅干

もぎたてイチゴ到着

理想のオジジイである

オマケをねだった結果

子供たちからの手紙
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