05年11月16日(水)「 腹を括る 」

 釈迦に説法ではあるだろうけど「鼻を括る」と「腹を括る」では1字違いなのにぜんぜん意味が違う。正確に言えば前者は「木で鼻を括る」であり、のらりくらりとして真剣にとりあわぬ様、「木で鼻を括った態度」などと使う。「腹を括る」は覚悟を決めるという意味だ。
『初診の時の医者は最悪の奴だった。木で鼻を括ったような態度でレントゲン写真を眺め、忙しいんだよ本当に痛いの? 骨に異常は無いけどなあ、と真顔で言った。信じられない医者だった。しかし今日で2度目の受診になる渡辺医師はどうやら信頼してもよさそうだ。トボケた顔つきが腰の痛み和らげてくれる。親身になって診察してくれ、熟考した後、自分一人で判断しかねる事案はすべて積極的に先輩諸氏に相談しているようだった。
 わたしは、自分のMRI写真のまわりに何人かの医師が集まり、何事かをこそこそ話している様子を見て、尋常ではないらしいことを感じ取った。どうやらブロック注射1本で済む状況ではないんだな、わたしは腹を括った』などと使うわけだ。

「朝霞ガーデン(管理釣場)の虹マスを全部釣ってしまおうぜ」とオカピーと約束し、シンキングライン(沈むフライライン)を二人分買って着々と準備をしていたのだ。いつもドライ(浮かぶ)フライばかり使っているので、いざ沈むフライや水中を泳がせて釣るフライを使うことにすると、それなりの準備が必要なのだ。昨日「さあ、しばらく真剣に絵を描くぞ」と意を決したのに、今日は「暇な時にフライも巻いておかねば」てなもんである。
 バイスに大き目のハリを取り付けニンフとストリーマーを巻く。浮かぶフライはいかに軽く巻くかで苦労するが、水中物は大いにファジーでいいのだ。ボサボサのゴミみたいなのでもいいし、リングの“貞子”みたいなやつでも釣れる時は釣れる。
 水中でモワモワと揺れ動くように、ハリに巻き付けた繊維を軽くしばって留めてから、ピッキングして引っ張り出し整形してゆく。実在するのかしないのか分からないがなんとなく水生昆虫のようではある。繊維を引っ張り出しながら妙な気分になった。自分の腰のことをふと思い出したのだ。わたしの椎間板ははみ出していたばかりか、その後無理をしたせいでちぎれてしまっている、らしい。どうりで痛い筈である。とはいってもまだはっきり判明した訳でもなく、何か得体のしれない固まりがあるらしい。細胞診もするという。
 ま、とにかく、おそらく、ちぎれた椎間板らしきものが神経束をグリグリ押して痛みになっているらしい訳なのだ。最近では右足が麻痺してきた。我慢強いのも一概にいいことではないのだ。まいったなあ。
 考え事をしたせいか、ファジーでいいとは言えいじり過ぎてしまったようだ。フライはやはり美しくもなくてはならない。わたしは壊して初めから巻き直したい気持ちを押さえてボサボサフライの腹をもう一度括り直した。

 腰痛に関しては腹を括ったので、もうフィールドノートでは書かない。闘病日誌じゃないのだ、申し訳ないことをした。
 「次こそフィールドで会おうぜ!」なんちゃって。
 



            




 mk
最近、老眼
がひどくて
トホホのホ
であるヨ
Yahoo!JapanGeocities topHelp!Me