黄色い浮きは全く動かない。
人も動かない。
05年04月28日(木)「 ガセネタ 」

 わたしの釣り&カヌーのフィールドの一つである渡良瀬遊水池、通称「谷中湖」の公式ホームページは無いものかと検索してみた。釣りのディープな情報が欲しかったからだ。それらしきものがあるにはあったが、観光案内的なもので釣りの情報は載っていなかった。
 しかし個人で作っているサイトがいくつかあったので、波乗り(ネットサーフィン)しながら覗いていと、あったあった……“谷中湖の釣り情報”だ。
 遊水(洪水防止)のための人造湖ではあるけれど、谷中湖は釣り場としてもなかなか侮れない。一見ヘラぶなと鯉しかいないように見えるのだけど、渡良瀬川とは直結しているし、渡良瀬川と繋がっているということは利根川とも繋がっているということだ。ハクレン、ボラ、ウグイ、オイカワなど巨大なものから微少なものまで様々な種類がいる……ようだ。
 いつだったか、朝5時ぐらいに地元のオジジイの四ツ手網の中を覗かせてもらったことがあったが、その中にはヤマメの稚魚も混じっていた。渡良瀬漁協が放流したものが落ちてきたに違いなかった。

 最新の“谷中湖釣り情報”はこうだ。
「現在、谷中湖では稚アユがたくさん釣れています。腕のいい人は2〜3時間で100匹から150匹も上げています」と、きたもんだ。
 わたしはその情報を見つけた瞬間「オー! アユが戻ってきたか!」と小踊りし、自然の底力に感服、釣りの神様に感謝したのだった。
 5、6年前だったか、これもやはり渡良瀬川から落ちてきたらしいアユが谷中湖で自然繁殖(どこで産卵したのか等は不明)し、連日大変な釣り客で賑わったことがあったのだ。「オキアミ団子のオランダ仕掛け」という、まあ釣りの「通」の人たちからすれば幼稚な「女子供」用の釣り方なのだろうが、わたしと娘は大いに入れ込み毎週遠路はるばる通ったものである。
 人よりたくさん釣りたいので仕掛けも色々工夫して作った。浮きの下にオキアミの団子が付いていて、その下にちいさな赤い釣りばりがたくさんついている。水中で団子がくずれてパラパラと舞い、稚アユはその中に混じった赤い針をも餌だと思って食いつく……という原理なのだが、わたしは釣りばりを7色に塗ってどの色が一番「食い」がいいか統計をとったりした。オキアミ団子に混ぜものをすると違う魚がかかる事も解ったし、40cmのボラをかけるとカーボンの延べ竿がキューキューと悲鳴をあげるという、なんとも喜ばしい現象も教えてもらった。
 アユの稚魚はピーク時には娘と二人で150匹も釣れたものだ。唐揚げにして南蛮漬けにした。
 次の年もそこそこに釣れ、そして何故か3年目にパッタリと釣れなくなった。谷中湖のもうひとつの顔(足尾銅山が足れ流した鉱毒を浄化させるために造られた、という歴史があるのだ)である鉱毒が未だに湖底にあり、それにやられて全滅した、とか水門を開けた時一晩で川へ遡上、逃げてしまった、なんていう噂がまことしやかにささやかれたりもした。
 
 いつも通り前置きがながくなったが、そんな経験があったものだから、ついに今年谷中湖にアユが戻ったのだと思ったのだ。で早速本日釣行、同行はいつものオカピー、奥さんに「遊び過ぎ」だと叱られながらやってきた。往きの車の中では「アユの南蛮漬け」の作り方で話が盛りあがる…………。
 しかし結果は散々なものになった。第一、釣り人がひとりも居ない。せっかく準備をしてきたので一応竿は出したが、釣れたのはオイカワが4匹だった。ガセネタをつかまされたわたしが悪いのだろうが、ホームページを公開している皆さん! 頼むから自分の発信する情報には年月日を必ずつけてくださいよ、古い情報には注釈をつけてくださいよ、お願いしますよ、まったく。


 カヌーを組み立てて湖上に出る。水面に遊ぶ夕日を見ながらジャズの話をする。ポップス系音楽や映画や文学にも話が及ぶ。
「音楽でも何でも、少しサブイぐらいのものが売れますね」と、オカピーが関西弁で言った。確かに音楽にしても文学にしても、それはあてはまるような気がする。「セカチュウ」しかり「韓流」然りである。
「プロデューサーとかはわざとサブイ部分を残して作ってるんですかね〜? 」
「一般大衆に受けるのは“この程度”ってのが解ってるんだろうねえ、不純だねえ、馬鹿にしてるよ」
 パドリングをしながらの会話にしてはなかなかに極めた内容になった。
 おそらくその意見は「真実」であり「ガセネタ」ではない。  




             





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