“水”好きのビーグルって珍しいかも知れない
2011年6月22日(水)「 カヌー犬、誕生 」

 ビーグルという犬種はもともと「水」をあまり得意とはしていないらしい。カヌー犬にしたくて犬を飼い始めたようなところがあったので、それを聞いた時はちょっと落胆した。が、すぐに「技(ぎ)は才覚のみで修るにあらず、努力研鑚の彼方に刃の心、水の体(てい)、風のごとき技(わざ)のあるを心得よ」という忍者武芸帳第63巻の名言を思い出した…………嘘である。

 腹さえ水に漬からなければ結構水辺は好きなようだった。小川でアメンボウを何時間でも追いかけているし、田んぼのオタマジャクシも好物?だ。ただし、深い池は駄目らしくて淵から1m以下の距離には近づけない。そのくせ、恐ろしげなうなり声をあげる海は大好きで、チンコが塩漬けで萎びようが、耳に海水が入ろうがへっちゃらのようなのだ。
 父親に似て分裂症に近い。嗜好に統一性がまったく無いのである。

 娘がビーグル犬ブログをやっている。そろそろネタが切れてきたのか「空(犬の名)をいよいよカヌーに乗せてみるぞ。ライフベストさえ着せてれば心配ないだろ」というと、すぐに「いいね、私も行くべさ!」とノリノリで加わってきた。不安を取り除いてやるには、なるべく賑やかな方がいい。
 わたしはさらに細やかな心遣いで、昨夜、ご丁寧に椎名 誠監督、野田知佑&ガク(犬)主演の映画「ガクの冒険」を空に観せて解説までしてやっているのだ。
「空くん、水は怖くないんだよ。お父さんはカナヅチだからちょっと怖いけどね、ヒヒヒッ」ってな具合。
 不思議なことに、空は55分の映画を最後まで目を輝かせて完全鑑賞した。
「感動しました、とうさん」とも言った。


 ライフベストを着装させると若干緊張で体がこわばった様子だったが、なんとすぐに自らカヌーに乗り込んだのだった。
「なんだこいつ、ぜんぜん平気じゃん! ノープロブレムじゃん!」
「愛が勝ったってことだな」
「出発進行! あらら、体を乗り出してるよ、あらら、水に触ってるし、あらら、立ちあがってるし」
「いやいや、演技かも知れん。格好から入る調子者かも知れん。金玉無いくせにオカマじゃないって言うし」
 あまりの喜びで狂ってしまったわたしは、訳の分からないことばかりを言い続けた。
「ドッボーン、ブヒッ、ブヒー」
 漕ぎ出して10分、空はカヌーの縁から足を滑らせて撃沈した。
「オー! 泳いでる、泳いでる、犬かきで泳いでる! たいした奴じゃのう!」
 犬が犬かきで泳ぐのは実に当たり前だ。才覚のみで水の体(てい)を得たり、である。

 名犬ガクのような本物のカヌー犬の誕生となるかは、今後の彼の努力研鑚次第ということであろうか。飼い主としては機会をめいっぱい与えてあげなければならない。川風に耳をヒラヒラさせながら彼方を見つめる姿を見ていると、手前味噌ではあるけれど「アッ、こいつ今、めいっぱい考えているな。よしよしもっと賢くなれ」などと一瞬うっとりしたりするのである。
「動物は溺愛すべし」と、忍者武芸帳第63巻にもある。
 



                




 mk
 
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出発!とうさんはエンジン

ぜんぜん平気ジャン!

揺れるとちょっと不安だけど

水の上って歩けるのか?

川風っていいもんだ

中州で上陸。気分は最高

とうさんとツーショット

とうさんが溺れているのだ

助けに行かなきゃならんのだ

カヌーは面白いな
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