優しい霊もいるのだな、とわたしは思うのだ
2009年5月4日(月) 「 13回忌の後で 」

 長い人は12連休などとほざいているこのゴールデンウイーク、世の中はまったく不平等だ。わたしの休みは今日だけ、しかも父の命日だ。今年は13回忌にあたるので「ゴメン、遊びに行きます」は通らない。
 母と姉家族とわたしの家族とで寺に集まり経を詠んでもらい、一応法事の体裁をつけた。最近では母もだいぶドライになっていて、読経が終わるととっとと帰ろうと言う。後の食事会の方が楽しいらしい。
 スーパーで買い込んだ寿司やら酒、妻が朝早くから作った料理などを姉の家に持ち寄り、昼間っから宴会になった。姉が作った密造ワインが辛口の日本酒のようで実に美味い。今年はなんとか葡萄を安く仕入れて真似てみたいものだ。酒類は密造ものが個性的で面白い。

 飲んで食って腹いっぱいになると、娘と姪が退屈してきた。わたしは20度ぐらいはありそうなそのワインですっかり出来上がっていたが、冗談のつもりで「ブルーギルでも釣りにゆくか?」と聞いてみた。
 まさか26歳の女二人がそんな子供騙しに乗ってくるとは思わなかったが、意外にも「超やりた〜い」という展開となり、歩いて10分の八幡池へ行くことになった。以前フライで馬鹿馬鹿しいぐらい釣れたところである。庭の隅を掘り、ミミズを1匹ゲット。押さえで仙台の笹蒲鉾を細く切ったものと生エビを1匹持って出発。釣果は気温が高かったことも幸いし、あきれるほどの入れ食い。姪が言うには「ブルーギルって頭悪いね」ってなもんだ。同じ魚が何度も釣れてくるような錯覚さえ覚える。

 あきれながらもしかし、よほど機嫌がよかったのか飽きもせず「釣りなんて久しぶりだ〜」とか言いながら、2人ともしつこく無邪気に釣り続けた。
 26歳の女性というのはこんなものなのだろうか? 無邪気過ぎやしないか? 職場の知り合いの26歳女性はかなり大人だし、妻は26歳の時すでに母だった。う〜ん……憂うべき事態かもしれない。
 わたしが何を考えているのかおおよそ察したらしく、姪が言った。
「あ〜あ、今日は叔父さんに合わせて無邪気に遊んだなあ。叔父さん孝行、楽しかった〜!」

 何? わたしに合わしてやっただと〜? わたしはちょっとむかつきながら空を仰いだ。
「父さん、あなたの大好きだった孫達はこんなふうに大きく育ちました」
 つぶやくと、ヒヤリと風が池の水面をひと撫でした。

 死んだ人は必ずどこからか、残した者たちを見守っているようだ。




                 




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