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チャンピオンはいつも孤独だ

並べ方で性格がわかる

ソテツの赤い実を採った

どこでも焼肉の図

これ無水鍋のふた
さばカレーは苦手だったらしい

可愛い重し

本当の親子みたいだろ

これは味噌豚。肉多すぎ!
2015年05月17日(日)「WBAタイトルマッチ」

 WBAのタイトルマッチが行われた。あ、ボクシングの話ではないので期待した人はここで止めといて。
 World Butamiso Association、つまり「世界豚味噌協会」のタイトルマッチなのである。
 超無差別級しか無いから、善人だろうが悪人だろうが、貧富、大小、貴賤、一切おかまいなし。とにかく一番旨い豚味噌を作った者が頂点に君臨するする訳だ。
 勿論動物も参加可能だ。豚が作った豚味噌もアリなのである。
 世界チャンピオンは現在、暫定だが「会長」のわたしだ。リングネームは「ピス豚(ピストン)小林」。現時点でわたしの作る豚味噌の味を越えるものはない。

 ところがだ、先日入会したばかりの小娘経理担当(ブタミソン玲奈)が、あろうことかNo.2の斉藤副会長(サイトン・モトンユキン)を飛び越えて、生意気にもダイレクトにわたしに挑戦状を叩きつけてきたのである。
「オリジナル豚味噌作ってみましたけん、利き豚味噌…やってくれんですかのう?」
 あ、女だかんな、そうは言わんかったな。

「トップに立つ者は、追って来る者たちの挑戦を威厳を持って快く受けてやらねばならない。戦いに容赦は必要ないが、リング外では挑戦者のその勇気をたたえ、友情を以て大いに接待(?)しなければならない」
 豚味噌の会の定款にちゃんと書いてあるのだ。
 で今回、 「タケノコ堀り⇒チバリーヒルズ見学⇒家族とのお見合い⇒潮干狩り⇒焼き肉大会⇒カヌー初乗り⇒試合」というメニューにした。てんこ盛りだが、疲れさせて勝とうという魂胆もあった。
 ブタミソン玲奈、09:15に土気入り。自宅から2時間以上かかるが、タケノコ掘りは早朝に限る。
「時期的にも1本採れれば御の字、贅沢は言えませぬ」などと言っていたくせに結局5本もゲットした。食物に対しては世界中の女がみんな(?)強欲だ。

 続いて「チバリーヒルズ」の見学。
 5億円以上するお屋敷の庭は、専属契約の庭師たちによって今まさにバラの花の海であった。思わず「100万本のバラ」のメロディーを口ずさんでいる浮かれた自分に気づいて「こんなことではタイトルを失うかも知れない」と不安がよぎった。

 その後、一度家に戻り唐辛子談義。ブタミソン玲奈を妻に引き合わせ、一路九十九里の海へ向かう。
 白子海岸でアサリ1Kg、ハマグリ1Kgを……獲れなかったので「天然ものは素人には無理」などとほざきながら潮汁用にスーパーで購入。他、肉・野菜・海老・いか・イワシの味醂干し・ゴマ漬け・さばカレー・琵琶ゼリーなど一通りの名物食材を往路で買い込んで、一気に横芝光町の栗山川へひた走った。


 川風薫る東屋のリングで、ついに試合開始のゴングが鳴った。まずブタミソン玲奈がわたしの作った豚味噌を舐める。
「やっぱり会長の作ったやつは美味しいです。奄美が、あ、甘みが深い。奄美の黒糖が効いてますねえ」
 褒めてくれるのはまあいいのだが、黒糖を入れた覚えは無い。強力な心理作戦だ。絶対に参りましたとは言わないつもりが瞳の中で輝いている。明らかに会長の座を狙っている眼だ。株主総会で騒ぐ気かもしれない。クーッ!来るなら来てミソだ。
 そして、次はわたしがブタミソン玲奈のオリジナル豚味噌を舐める番だ。無意識に、ご飯に箸を伸ばしたら即負けだ。気を付けなければならない。
「うーん……なめらかな味だ。ゴツゴツしたところが全く無い。若い女の肌を思わせる舌触り、ミルキーさを醸し出す細かくつぶした生姜の繊維感。よしよし、よくできておるぞブタミソン玲奈!」
 あえてチュ−ブ入りおろし生姜を使った工夫が効を奏している。わたしはつい口に出して褒めてしまった。


「どこでも焼肉セット」で肉・野菜・タケノコなどを焼く。採ったばかりのタケノコの先っぽにはエグミがまったく無い。味醂干も鉄板でじんわりと焼けることがわかった。網で焼くよりジューシーだ。さばカレーだけはお気に召さなかったようで「不味い」とおっしゃるサバけた性格。サバサバしたぜ〜。
 腹ごなしはカヌーだ。組み立てて川へ出る。一人で乗ると舳先が持ち上がって風にあおられるが、ブタミソン玲奈は本日立派に“重し”の役目を果たしたのであった。
 組み立てと収納に合計1時間、乗ってた時間30分…という試乗体験カヌーの見本のようであった。

 おう、タイトルマッチの結果ですか?
 わかりました。審査委員長の言葉をそのまま記載します。
「ピストン小林のものは正真正銘伝統の豚味噌である。鹿児島の、薩摩の伝統の味と言っていいだろう。一方、ブタミソン玲奈のものは、口当たりも柔らかく大変に美味いのだが、豚味噌ではなく味噌豚ではないのか?という意見が最後まで残った。味噌味の豚肉炒めではないのかというわけだ。したがって、今回はブタミソン玲奈の反則負けとする。チャンピオン、ピス豚小林のタイトル防衛である。若いんだから玲奈ちゃんまたいらっしゃい!」

 審査委員長って 誰かって?
 当然わたしである。人が足りないんだから当ったり前田のクラッカーである。
 会長というのは3日やったら止められまへんなあ。