２０１６年１２月２３日（金）「ツルピカ」

　人のイメージというのは、ほぼ８０%が第一印象で決まるのだそうだ。つまり“見てくれ”である。
　チビでハゲで鼻デカなのはもうどうしようもないが、それでもなんとか他人に、特に女の人に、特に若い女の人に、なるべく若くて可愛い女の人に（２２歳以下は除外）いい印象を与えるにはどうしたらいいか考えてみた。暇なのである。

　が、考えるまでもない。チビハゲ鼻デカジジイが“今更いじれる部位”もしくは“努力でなんとかなる部位”といえば、もはや「肌」だけなのである。英語で言うとスキンだ。
　毎朝蒸しタオルで顔を蒸かし、きっちりカミソリで髭を剃っているので、まあそこそこ綺麗な肌のつもりではいたのだが、テレビで“エマルジョンリムーバー”という商品の宣伝を観ておったまげた。毛穴には、そりゃあもう色々な物が頑固に詰まっていて“くすみ”や“黒毛穴”に直結するらしいのだ。
　CMの実演では、エマルジョンリムーバーをスプレーするだけで毛穴に詰まった脂肪などが溶け出し、白濁した液体がポタポタと流れ落ちる様子が映しだされていた。すごい！ わたしは即、通販 サイトの「カゴ」に入れたのだった。

　が、その前に“角質落とし（ピーリング）”だ。ものには順序というものがある。
　１０年前に妻の顔専用高級ピーリング剤を上半身に塗ったくって脱皮したことがあったが、ツルツルになって照明に向かって胸を張ると、反射して辺り一面が明るくなってしまうほどだった。もっとも後で妻にはえらく怒られて￥８０００を弁償させられたけどなあ。

　薬局の中をブラブラ歩いていて、最近は安いピーリング剤が結構あるのを発見した。
　で、前々からやってみたかった「全身角質落とし」に挑戦してみることにしたのだ。２５０g入りのチューブを４本購入した。これで心置きなく使うことが出来ると思うと、思わず手が震えた。○○の裏までやる奴なんかいないだろうなあ、と考えるともう笑いが止まらない。
「ターミネーター２」に出てくるメタリック男ぐらいにツルピカになったら、きっと近所を裸で走ってみるだろう。

で、ついに今日やった訳だ。○○の裏も、○○の先も、○○の穴回りも念入りに念入りにこすった。ポロポロポロポロと垢みたいなやつが落ちてくる……。面白すぎて擦る擦る。陶酔の域に達してしまった。
　洗い流そうとお湯を浴びてみて飛び上がった。「ギャー！」
　垢のように見える物は、実はサンドペーパーの砂のにあたるような役割のもので、いわばヤスリで皮膚を削っているのに等しいのである。

　ツルピカを通り越してヒリピカである。カサブタが体中に出来てしまった。
　次の短編小説のタイトルが決まった。「ツルピカ男とカサブタ女」で行こう。