フィールドノート 2004
5月4日(火)  たけのこ採り
 5月4日は父の命日である。当たり前だがこれはいつまでも変わらない。
 日本中が大型連休でウキウキしているのを尻目に、我が家は毎年法事である。しかし考
えようによっては、法事だからといってわざわざ有給休暇をとる必要も無く、便利といえ
ば便利なような気にもなってしまうところが人間の感覚のいいかげんな部分でもある……
ような気もする。ちなみに前日の3日は結婚記念日だ。ハハハ。
 色々なことが重なって、父の墓の隣に義母(妻の母親)の墓もできてしまったので墓参
りをするにはいたって便利。つまり不謹慎ながら一石二鳥なのである。感謝、感謝。
 さてさてもうひとつ、5月4日といえば我が家では「たけのこ掘りの日」と決まってい
るのだ。いつからそうなったかはっきりは覚えていないけれど、ある年墓参りの帰り道で
多量のたけのこをゲットできたのをきっかけに、年中行事になった。
 最近では墓参りの三点セット(花、線香、タワシ)を忘れることはあっても、たけのこ
掘りの三点セット(長靴、スコップ、鎌)を車に積み忘れることはない……ぐらいに妻は
燃えている。この人は「食物を採取すること」に欲深いのかもしれないなあ、柿の時も栗
の時も、そういえばそうだった。
 時期的に少し遅いのではあるけれど、まるで我が家のためにキープしておいてくれたか
のようにきまって毎年だいたい同じ量は採れるのである。(12本前後)
 妻はまだまだ探したい様子であったけれど、ぼくはある程度採れたのですぐに飽きてし
まった。田植えの終わった田んぼや竹林をボンヤリ眺める。
「たけのこは一晩に1mぐらい伸びるっていうもんなあ、それを利用して身長が伸びる薬
なんてできないもんだろうかなあ……発明できたらノーベル賞だろうなあ。真っ先に俺が
買うだろうしなあ……180cmなんてあったらいいよなあ……ウフフッ」
 孟宗竹の林の中だからというわけでもないが、一瞬妄想の世界で一人遊んだ私の後ろで
今度は妻が鎌を振り回しながら「カマキリだあ!」とか言っている。あげくの果てに採る
べきたけのこがもう無くなったのを知ると今度は藤の花などを切り落とし、あれやこれや
と体に巻きつけたりなどしてポーズを付けている。う〜ん、奇怪な奴。
 5月4日は父の命日である。お父さん、妙な夫婦でごめんなさい。
 そうそう、ここは千葉県の土気(とけ)であります。

「たけのこ掘り」に
  妻は燃えるのだった