カヌー犬にするぞ〜!!!!
2010年05月30日(日)「 空(ソラ)君がやって来た 」
もしも犬を飼う機会があるならばぜったい“ビーグル”がいい、といつからか思うようになっていた。血筋的にハウンド(猟犬)であること。声が美しいこと(狩りの時の鳴き声から“森の声楽家”と言われている)。中型であること、丈夫であること、オヤジ顔であること……などなどの理由からだ。
しかし犬を飼うということは一大事だから、家族の意見というのも無視する訳にはいかない。やれ柴犬がいいだの、コーギーがいいだの、皆好き勝手なことを言っては恍惚の表情で家族で団欒したものだった。そして具体的な進展がないまま時は経っていったのだが、折につけ「ビーグル、ビーグルはいいよなあ」とわたしがしょっちゅう言っていたものだから、いつのまにか妻も娘もわたしに洗脳されてしまったのか「今日、どこどこのペットショップにビーグルがいたよ!」などと報告するようになったのだった。
そのビーグル犬との出会いはもう1ヶ月以上前である。例によって妻と娘が買い物のついでに見つけてきた。
「オスなんだけど、実はちょっとね、育っちゃっている訳なのよ! もう生後4ヶ月な訳。でね、そうなるとなかなかもう売れないんだって。¥90000ぐらいだったのが、いま¥20000な訳ね!」
そんな話を聞いてしまうと、ちょっと大袈裟だがわたしは涙が出てきた。
「そういうもんなんやなあ、売られてる動物ってそういうもんなんやなあ……」
わたしは小学生時代に飼っていた犬を思い出した。ハッピーという名の日本スピッツだったが、多くの時間を共に過ごし、多くのことを語り合った。笑われそうだがその頃の唯一の友人だった気がする。納得できない叱られ方などをした時はハッピーを床下で抱いて寝た。犬は十分に友人になり得るのだ。
さらにだ、その売れ残りビーグルは、“問題は無いとは思うけど”という獣医の診断付きで、頭のてっぺんに小さなコブがあるらしいのだ。それも売れない理由になっているらしい。妻と娘は面白がり、すでに彼を“ボコ”とか呼んでいるので(頭がボコボコだから)ある。ひどいなあ、わたしの頭の中で彼の悲痛な叫びが聞こえ始めていた。
「助けて〜! 誰かボクを買って(飼って)ぐで〜! もっといい名前を付けてくれ〜」
次の週、そそのかされてボコ君の顔を見に行った。あくまで「顔を見に」である。人なつこい奴でいきなり旧知の仲のごとく抱きついてきた。説明をしてくれたお姉さんもかわいい。実にいい感じだ。
30分ほど説明を受けた。それによると¥20000はあくまで犬本体の値段であり、予防注射代だ、迷子時用チップの埋めこみ代だ、と次第に総見積額は増えていった。飼育用の備品なども含めると、最終的にはあまり“お買い得感”は無くなってしまっていた。わたしはボコ君に顔を舐められながら「舐めた商売しやがって」と思い、ヒヒヒッと笑った。
「考えていただく時間はまだあると思いますよ〜」などとかわいいお姉さんは言った。まだすぐには売れないと思います……という意味に受け取り、即決・衝動好きのわたしもその日は慎重にうどんを食った。あ、いやいや「ちょっと飯食いながら家族会議してきますわ」と言ってフードコートへ行き、妻と娘はカレーを、わたしはうどんを食った、というのが正しい。
帰り際、ペットショップの前を通ると又ボコ君の悲痛な叫びが聞こえてきそうで、わたしは迂回して駐車場へ向かった。なぜだかわたしは急に不機嫌になり、家族はわたしが何に怒っているのかわからず困惑していたようだった。
自分の年齢と犬の寿命を考えていたのだ。椎間板ヘルニアのことも考えた。妻の負担が大きくなるのは申し訳ないし避けなければならない。すでに居る4匹の猫のこと、散歩のこと。庭で飼うか部屋で飼うかの点でも娘と少し意見の相違があるのも気になっていた。わたしは、犬は外で自由に走らせたかった。野田知佑さんと“ガク”の関係が理想なのである。もちろん飼いたいことは飼いたいに決まっているのだ。がしかし、わたしはその日、珍しくウダウダグズグズと悩んだ。
「訳わかんない。ダダっ子みたい」と娘にまで言われてしまった。
5月28日の夜、宿直勤務中に妻からメールが入った。
「麗ちゃん(娘)がボコ君を買っちゃいましたヨ。さらに値段が下がって¥14000でした。10回の分割だって、しっかりしてるワ! 明日パパが帰宅したら、みんなで迎えに行くよ」
まだ売れ残っているかどうか、妻と娘は見に行ったらしいのだ。そして、わたしの“やったもん勝ち”の思想は見事に娘に受け継がれたようだ。困惑しながら、わたしは「」と返信メールを送った。
出資したのが娘であるので、命名権は娘にある。彼の名は「空(ソラ)」になった。決して“カラ”ではない。
mk
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