フィールドノート2004
6月23日(水)  空いろ
 今日は健康診断でバリュームを飲んだり、回転台
の上でグルグル回されたりして嫌な思いをしたので
「気晴らしに何か買うちゃろ〜!」と出掛ける。
 珍しく最後まで我慢した自分への、超都合のいい
褒美というわけである。
HARDOFFというリサイクルショップに立ち寄
ると、200万画素光学6倍ズームのデジカメが信
じられない安値で出ており、衝動買いをする。
 果たして本当に衝動買いなのかどうかは別にして
結局このデジカメは店側の値付けミスではあったの
だけど、強引に買い取ってしまった。ウフフ。
 妻に見つかると「私もご褒美、ご褒美欲しい!」
と騒ぐので、こっそり部屋に持ち帰ろうと足音を忍
ばせているところを、正面からあっさり娘に見つか
ってしまった。
「何か買って来ただろ?白状せ〜い!」と娘は言っ
た。妻よりするどい奴である。
 この娘は美大で刺繍を専攻しているのだけど、つ
い先日、卒業制作で「ハクスバーナ賞」とかいう賞
を取った上に、専門誌に取材かなんか受けちゃって
最近ノリノリなのでちょっと恐いのである。
「私もホームページ作るけんね、作品発表するけん
ネ」などと言って、平気で父親の1番大切にしてい
る最新のノートパソコンを取り上げるような娘であ
るのだ。
 私は恐れおののき「あんたのために、あんたのホ
ームページのためにデジカメ買ったサ〜!」とつい
言ってしまったのであった。まったくトホホだ。
 空々しい言い訳をしてしまったので、夕方から空
の写真を撮りにいつもの見沼地区へ出掛ける。台風
が去った後の晴れ渡った空には夕暮れ時、突然大柄
の雲が出る。これに夕日が当ると実にいいのだ。
「ほ〜ら見ろ!」現地に着いて膝をたたく。思った
通りの空の様子だ。雲の形が刻一刻変わっていく。
 今や娘のものとなったデジカメのシャッターを、
惜しい惜しいと押しまくった。
「たった3時間のご縁でしたねえデジカメさん!」
 私が声に出してサメザメと歌舞伎の大見得風にデ
ジカメに語りかけているのが聞こえたのか、土手の
上から散歩親父が、これまた大声で言った。
「カメがいたのか?」
 空々しいことはするもんじゃない。