05年9月17日(土) 「 下向きに咲く花 」
千葉・土気のホームセンターで1本168円で買ってきた「ダチュラ」の苗が、なんとか頑張って大きくなり、我が屋のベランダで花を咲かせた。ちょっと感激している。
買ってきた時は背丈が15Cmしかなかった。苗には悪いが、枯れてしまっても168円なら惜しくはない値段だなあ、ぐらいの気持ちだったのだ。それがすくすく伸びてしかも今年中に咲くなんて超ラッキーである。
思えばわたしはこの花がつくづく好きだ。妙な表現だが自分でも不思議である。幼少の頃見た野生の群生に起因するとは思うのだが、見ると心が和むのである。田中一村の絵の中に描かれていたりしたこともあり、一村人気と並行して一時ブームがあり、花の色も形も種類が増えた。
実はそのブームになる前に、わたしはさる園芸農園の裏口を訪ね、市場に出る前の苗を無理を言って3鉢分けてもらったことがあった。その時は土の水はけが悪くてすべて枯らしてしまったという悔しい経験もあるので、ことさらこのベランダ・ダチュラが嬉しいのかも知れない。
苗を買った時、母もいっしょだった。
「そんな安物、咲くもんですか」と言われたことを急に思い出したので、久しぶりの墓参りの今日、ちょっと威張りたい気分で写真を持っていった。
「へえ〜、咲いたんだ」
母はひと通り驚いてみせたりしたが、花好きの彼女にしては今ひとつノリが悪い。どうやらあまりダチュラが好きではないらしいのである。すぐに生い茂ってしまって始末におえないのと、夕暮れの薄暗がりの中でボーッと白く見えるその咲き様が“気持ち悪い”らしいのだ。
「あんたは恥ずかしいぐらいに性格が明るいのに花は“下向きに咲く花”ばかり好きじゃねえ、下向きに咲く花は普通は好かれんとに」
わたしはハッ! とした。そんなことを言われたのは初めてだ。確かにダチュラにしてもホタルブクロにしても下向きに咲く花だし、さらに改めて考えてみると、上向きに咲くダチュラの品種や、同族の朝鮮朝顔はそれほど好きじゃない。確かに鋭い指摘だ。これは何か深いものがあるかも知れない。
「下向きに咲く花はひたむきに咲いても下向きじゃねえ」
80歳の母にも分かる程度のくだらない洒落を言ったわたしだったが、母は耳が遠いせいかピクリとも反応しなかった。
もう少し「下向きに咲く花」を研究してみようかと思う。暗いとは少しも思わないが、仮にそうだとしても“暗いこと”は悪いことではない。今の時代があまりにも“明るいもの”だけをもてはやし過ぎなのだ。
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