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市販品と変わらぬ味だ! | |||
2017年12月14日(木)「試食と本食」 24時間勤務から帰宅してみると、ビーフジャーキーと干し芋はまるでわたしの帰りを待ちわびていたかのように“ドヤ顔”で干からびていた。いやいやもとい、完成の域に達していた。芋ちゃんの方は少し乾き過ぎたようにも見えた。室内乾燥とはいえ気温は外と同じだし(貧乏で暖房装置が買えないのだ)、おまけに扇風機で約36時間も風を当てられていたのだから無理も無い。 わたしは先ずは肉の味見をすることにした。見た目は正に市販のビーフジャーキーと同じだが所詮はお手製である。味を付けてあるとはいえ生肉を干しただけの“無防備な食物”である。砂漠で、死んで干からびた牛を食うのと何ら変わらない。場合によっては干し寄生虫も噛み締める結果になるかも知れないし、そうなるとそいつらはわたしの腹の中の水分でよみがえり、わたしの体の穴という穴すべてからゾロゾロと這い出してくるだろう。わたしは牛肉を前に鳥肌を立てていた。 「ヤバそうだったら吐き出せばいいだけじゃん」 自分に言い聞かせ「エイヤ〜ッ!」と気合いを入れて肉の小片を口に放り込んだ。鼻の穴を大きく膨らませ、そして恐る恐る噛み始めた。 彼方からフェードインで音楽が聴こえて来るような感じがした。優しいニューエイジ系の無国籍な音楽だ。牛脂と醤油の奏でるハーモニー。かすかなニンニクのフレーバーと後をひく黒胡椒の蠱惑的な辛味。 「寄生虫がいいダシになっているのかも知れねえなあ…」 わたしは舌舐めずりと鼻唸りを繰り返しながら噛み続けた。 「試食」に対して「本食」という言葉が有るかどうかは分からない。 わたしは肉と芋を小袋に入れ、車に乗り込んだ。どうせ食べるのなら少しでも美味しく食べたいからだ。 食べ物の味というのはT.P.O.(Time&Place&Occasion)に大きく影響される。ドライブ中に食うビーフジャーキーはたまらなく美味い。そしてわたしはその為だけに車を九十九里まで飛ばした。さらに 海を見ながら食う干し芋は、飛んでくるマグネシウム(にがり)の飛沫と相まって格別の味になるのだった。噛めば噛むほど増してくる甘味、これを至福と言わずして何と言おうか。 残念だったのは、両方とも美味すぎて抑えが効かず、往路で完食してしまったことだ。帰路に食うものが何ひとつ無いという悲惨な状況で、わたしは袋の中に落ちて溜まった黒胡椒だけを指に付けてしゃぶった。まったく、ケチなジジイになり下がったものだ。 それと……、当然また作るつもりではいるのだが、犬たち以外に喜んでくれる者がいなくなったことだ。家族などは、寄生虫の話をしてからはわたしの半径2m以内に近づこうとはしないのである。 孤独とはこういう事を言うのだなあ、寄生虫の気持ちが分かるような気がしてきた。 ※次への反省点&余談 @ビーフジャーキーはもう少し薄い(4mm厚位)方が食べやすいです。それと、出来ればもっと脂肪の少ない赤身の方がいいです。と、黒胡椒を欲張らない。ほとんど落ちて勿体ないです。 A干し芋は“斜め輪切り”の方が縦の繊維が切れていいかも知れないです。種類的には「紅はるか」で作ったものが現在市場では主流のよう。甘味と柔らかさが魅力なのでしょう。 「紅はるか」は海から戻ってすぐに蒸かして只今乾燥中です。細切りも食べやすそうです。 |
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