2012年09月23日(日)「 母、施設に入所する 」

 姉の所に身を寄せていた母の、アルツハイマー性認知症がすっかり進んでしまった。今年、姉が定年退職したのでずっと付きっきりで介護していたのだが、症状が進むにつれ限界が見えてきた。日々姉も鬱々となっていくし、症状を聞くにつけ決断した次第である。

 通常は入所を希望しても、運が良くて半年、混んでいると2年ほど待たねばならないケースもあるという。しかし、姉が足で運をたぐりよせた。偶然が偶然を呼んだ感じで、申し込みから1ヶ月余りで、しかも住まいから自転車でも行ける距離に“空き”が見つかったのである。

 強い雨が降っていた。母は入所しても、そこが何処なのか分からない様子だった。個室も共用部もとてもきれいなので、心なしか嬉しそうである。自分で作ったチギリ絵(これももう自作であることを分かっているのかどうか?)を個室の壁に貼ってもらい、ありし日の夫の写真、若かりし日の自分の写真を眺めている。そして言うのだ。
「この男の人は誰な? この女はわたしの服を着ておるなあ。誰じゃろう」

 介護師をはじめ、施設の方々は親切である。手馴れた対応で母をなだめたり笑わせたり片時も目を離さない。自宅に居るより事故や怪我の心配は要らないだろう。
「里心が付きますからね、ご心配でしょうが3ヶ月ほどは我慢してあまりお見えにならない方がいいかも知れません」
 そういわれても、わたしは「そういうものなのか?」と思うだけである。

 
 いいことなのか、悪いことなのか。最終的に「母の一生は幸せだったと思えるだろうか。父はあの世で怒っていないだろうか。自分に出来ることを何か怠った結果ではないのだろうか。
 疑問は後からあとから、いくらでも沸いてきた。結論などは出てくるわけもなかった。
 そしてわたしは、しばらく何も考えないことにした。




                 




mk
 
お袋はわたしを“トシちゃん”と呼んだ。
それはお袋の弟の名前である。
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