もう痛んでいるのもあるけど |
上の方にはまだまだあるのだ |
右2本はヨーグルトで白濁 |
2014年9月5日(金)「仕込み・第二弾」
先月の26日に仕込んだワインが順調に育っている。発酵が一段落したのか、もうブクブクと泡は出ないが、液の中で酵母菌がまだ何事かをコツコツとやっているらしく、液全体がゆっくりと静かに動いているのが見えるのだ。
こういうものが部屋の隅に置かれてあると、同じ生き物同士の仲間意識というか連帯感というかそういうものが生まれてきて、ついつい話しかけるね俺は。
「今何してるの?」とか「友達はいるの?」とかね。
「アルコールを作ってんだよ! 酵母菌に友情は要らんのよ、おじいさん!」
盗み聞きしていたらしく妻がドアを開けてほざいた。
本当にワインが作れる事がわかったからなのか、なにがしか関わらないと飲ませてもらえないと思ったのか「手伝うから第二弾いこうよ」と妻が言い出した。この人は飲食関係となると、途端に興味がわいてくるらしい。
暑いし、蚊は多いし、デング熱は流行っているし、俺にその気はまったく無かったのだけれど、実を早く処分しなきゃならん事情もあって根性を出す事にした。
先月仕込んだ分も今日で10日目なので、ヨーグルトを適量ぶちこまなければならない、という作業がどうせあるのだ。
発酵でアルコールと同時にリンゴ酢というものができるらしくて、その酸味を押さえる為に乳酸菌の力を借りるのだ。
「ほ〜ら、やっぱり! 乳酸菌が酵母菌の友達じゃん」
採っても採っても採りきれない。今回は完熟した実が多いので胸ポケットに入り込んで潰れたり、ボタボタと頭皮に雫を浴びて髪の毛がそこだけ異常に生えてきちゃったりと散々だ。それでも採りきれない。まだ100房位はある。しかもさらに採りづらそうな場所ばかり残してしまった。倉庫の屋根の上のやつなんて、どうすりゃあいいのよ?
最後は投げやり、搾り方もチョー適当。実の量は前回より多いと思ったが葡萄汁は5.5リットル(前回7L)しかない。手抜きもいいとこだ。腕抜き、と言った方がいいかも知れない。腕力及び握力が日によって気持ちでずいぶん違うのだ。
但し今回は砂糖をきっちり計って入れた。500ccに25g。これが今回期待できる唯一の材料である。この割合でいくと売ってるものとほぼ同等の標準的なアルコール度数になるらしい。
聞いた話だが「貴腐ワイン」というものもあるらしい。木に成った状態で、貴腐菌という菌によって皮だけが溶け、そのまま半乾き状になった実を貴腐葡萄というらしい。で、それだけを集めて作ったなかなか貴重なワインらしいのだ。芳醇で濃厚な味らしい。
どうせやるならそこまで挑戦してみたいけどなあ。どうすれば残っている100房がそういう貴腐状態になるのかどうかさっぱり分からない。
それになんだかデング熱が千葉まで来そうな勢いだもんなあ。やばいよなあ。うちの庭は蚊だらけなんだものなあ。球になって襲ってくるから怖いよ。
そうだ、テング熱に名称変更すればいいかも知れない。そっちの方が恐怖は薄れるし面白い。名称というのは意外に大切なのだ。
「ワインのラベルも作ってみたいわ。何て言う銘柄がいいかしら、フフッ」
「時代や世相を刻むために“デングテング”‐2014の熱‐ってのはどうだ?」
「みょうちくりんで馬鹿馬鹿しくて素敵だわ! だけどグテングテンに酔いそうねえ」
妻は最近、やっと下らないダジャレが言えるようになってきた。