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気分は遊覧船だ

春爛漫

これは何分咲き?

ジジババ5人組み

やっと乗れたみたい

気になってしょうがない

ひっそりと咲いている

去年は見れなかった

辺りまで明るくなるね

花は無くても春だと分る

お約束のヒレカツ弁当
2018年03月24日(土)「パドル初め」

 桜の開花が例年より10日ほど早いらしい。確かに近所の桜も蕾が割れて 、陽当たりのいい場所では既に5分咲き程度になっている。染井吉野はまあどちらかというと早咲きだが、職場の病院では既に山桜もチラホラ咲いているので、今年は温かくなるのが本当に急激だったのだろう。

 パドル初めに亀山湖に向かう。2月中に行く予定だったのだが、飲んでいる途中で酔って眠ってしまい、椅子から床に崩れ落ちるという失態をやらかしてしまった。その際ひどい突き指をしてしまったのでパドルが持てなかったのである。
「もう本当に若くないんですからね」と皆言ってくれるが、顔は笑っているのでなんとなく受けているような気になり、深酒をなかなか止められない。
 まあ、死ぬ時は死ぬよ。

 亀山湖に着くと案の定チラホラと桜が咲いていた。菜の花もコブシも咲き誇っている。終日曇りの予報もいい方に外れ、時折日差しが射している。カヌー日和だ。
 80歳ほどのジイ様の先客がいて、ゴムボートとビニールカヌーに空気を充填している最中だった。水上お花見を計画、仲間を待っているところだという。
 そのビニールカヌーがまた貧相極まりないもので、いくら空気を詰めても固くならずマシュマロマンようにブヨブヨしているのだ。要するにビニールが薄いのだ。昔わたしもオークションで¥3000で落とした事がある代物だが、わたしは危ないのでとっくに捨ててしまった。ジイ様も友達が要らないというのをタダで貰ったらしい。

 わたしが自分のカヤックを組み立て終わり、そろそろ出航という頃にやっとジイ様のお仲間が到着した。おそらくだが、これまた全員80歳代に見えた。男3人、女2人のグループ交際。手分けしてゴムボートとビニールカヌーを水辺まで運ぼうとしているのだが、なんせ力が無いので苦労している。ノソノソと運んでいるので、一瞬カヌーが棺桶に見えたりして……。
 さらに乗り込むのは予想以上に大変。固定されていないものに乗るというのは実に難しい。バア様2人の内どっちかが必ずや落ちると思いましたね。
 いつでもレスキューできるようしばらく側に付いて見守っていたが、過剰な親切はイコールおせっかいというものだ。わたしは挨拶して先に出発した。しかし1 00m離れても気になって気になって仕方ない。度々カヌーごと振り返って確認したので方向転換のパドル捌きがとても上手くなってしまった。

 どこの崖に桜の木が有るかは去年の経験からだいたい掴んでいるので、記憶を辿りながら周遊する。気分は遊覧船だ。
 暖かいのでバス釣りのボートが多数出ていて、そうなるとカヌーはジャマ者扱いだ。ルール上はカヌーはただの通行人という立場だが、釣人にとっては通行人すら側に来てほしくない時もあるだろう。風も無いので強く漕ぐ必要もないし、バターにバターナイフをさすように静かに静かに隙間をすり抜けて進んだ。

 湖というのは2時間ほど漕ぐと飽きてしまう。これといった目的地が無いからだ。だから小島や見晴らしのいい湖畔の公園を見つけて上陸し、弁当を食ったり靴を脱いで横になったりといった変化を敢えて楽しまなければならない。銃でも有れば誰もいない島で的撃ちなどして遊べるだろうが、ここはアラスカではないのだ。1人寂しく、今回はヒレカツ弁当を食べた。¥670なり。

 出発点の笹公園に戻るとジジババ5人組も東屋で宴会中であった。全員生きている。1人も溺死しなかったようだ。とりあえず胸を撫で下ろす。
 1人のバアさんが声をかけてきた。
「ずいぶん長い時間戻って来ないから、落ちて帰れなくなったんじゃないかって皆で話してたのよ」
「ハハハ、ご心配ありがとうございます。皆さんはどの辺まで行ったのですか?」
「その辺だけちょっとグルッと、でも楽しかったわ」
 崖に咲く桜は見られましたか? と聞こうかと思ったが止めておくことにした。バアさんがとてもいい満足そうな顔をしていたからだ。
 余計なことを教えて、今ある満足をわざわざ壊す必要は無い。
 お?……けだし名言……っぽいネエ。