午後７時、電話のベルがけたたましく鳴った。画家の颯田 靖さんからだった。
「売りに出てた僕の絵が２つとも消えちゃったんだけど！ どういうこと？」
「え！ ちょっと待って、見てみるから……あれ〜！」
妻が友人たちの絵をヤフーオークションで売っていることは、これまでも何回か書いてきた。春山うめ（水彩画）、颯田 靖（アクリル・水彩画）、カレン秋山（水彩画）、小林倫博（版画）、山本由布（パステル・アクリル画）、小林麗音（日本刺繍）などの作品を扱っている。春山うめさんが稼ぎ頭なのだが現在展覧会用の大作にとりかかっているので出品予定が立たない。で今は、颯田 靖さんに無理矢理ハッパをかけて作品を出してもらっていたのである。とてもいい作品が続いているので入札も多く、本人もやっぱり嬉しいのだろう筆が乗ってきていた……そういう状況だったのだ。
「なんか……、がっかりだよね。見てくれてる人がたくさんいた訳だしさ。あ、だけどね……マダム（颯田さんは妻をそう呼ぶ）を責めちゃだめだよ、そういう事務的間なことはお前さんがしっかりしないと」
「ハイ、ちゃんと調べてから、連絡します。すみません」
わたしは体の芯から緊張して“大学時代の恐い恐い先輩”に何度も何度もおじぎをしながら受話器を置いた。
考えられる原因は１つしかない。オークションの出品料や手数料、その他の有料サービスの支払いに使っているクレジットカードに支障があったのだ。おそらくカードが失効したのに違いなかった。引っ越しなどでバタバタした状態で、住所変更・電話番号変更などを怠ってしまったための１００％ヒューマンエラーである。お恥ずかしい限りである。契約者との電話連絡ができなくなると、カード会社はすぐにそのカードを無効にすることも初めて知った。世の中は甘くないことを肝に銘じなければならない。
颯田 靖さんの「いつでもいっしょ」「春の雨」この２作品を見ていただいていた皆様、さらにはありがたいことに入札していただいていた皆様、誠に申し訳ございませんでした。急ぎ修復し、再発防止に努めますので、何卒今後ともよろしくお願いいたします。
