ウフフフッ、の渓流釣り解禁である。
今年は会社でのソワソワを完全に感づかれてしまって、かねてより「私を釣りに連れてって」と言っていた後輩の女子社員2人を案内する羽目になってしまった。
「ま、こんな年もアリだな、合コンみたいなもんだ」と考えると「ウフフフッ」は2乗になった。我ながらプラス指向であるなあ、と思う。不純異性間交友は好きではあるが、やはり人様の家の大事なお嬢さんに間違いを起こさせては……と思い、男をもう一人加えて合計4人の釣行とあいなった。
場所は千曲川源流の秘密の穴場である。そこは魚の型は小さいが、スレていないので初心者でも簡単に岩魚が釣れるのだ。それに原流域ではあるけれど狭いながらもテントスペースがあり焚火もオーケー。
ただし真夏でも夜はえらく冷え込み、寒くてまともに眠れなかった経験を何度もしていたので、ぼくの中では密かに「不夜城」と呼んでいる場所ではあったのだ。
で、あるだけのダウン製品を車に詰め込み、酒を十分に買い込んでいざ出発。そして現地では天気も釣果も上々、ガイドのぼくも誠に株をあげたのでありました。
ひとつだけ誤算だったのは、女子社員2人が意外に「量」を飲める奴だったのである。十分だと思った手持ちの酒はアッという間に底を尽いてしまった。しかもそこは千曲川の原流域、コンビニエンスなものなど何もないのだ。もっと飲みたいよ〜、飲まなきゃ凍えるよ〜と4人は地団駄を踏んだ。
と、その時A子がボソッと言った。
「あのさあ、私さあ、冷え性だからさあ、これ持ってきたさあ〜」
彼女がザックから引っ張り出したのは滋養強壮がうたい文句の「養○酒」だった。
「酒なんか何でもおんなじ、飲も飲も!」となり、とうとうボトル1本飲んでしまった。
そしてその夜、妙にムクムクと昂ぶった男2人、モソモソとテントから這い出して、極寒の川原で鹿の声を聞きながら「養○酒」の恐るべき効用について朝まで語り合ったのだ
った。
う〜む、やはり、そこは「不夜城」であった……らしい。
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