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もうすぐ分る彼女の正体 | |||
2015年02月25日(水)「実生(みしょう)」 娘が昔花屋に勤めていて、花や蘭や観葉植物のことを盛んに食卓での話題にした時期があった。それで初めて実生をミショウと読むのだと知ったのである。50歳までジッセイとか読んでいたものなあ、実に恥ずかしいことだ。 土気に越してきてすぐの頃だからかれこれ7年は経っている。ある日、わたしは完熟した非常に美味いくだものを食った(らしい)。で、いたく感激し「こんな美味いくだものは初めてだ、なんとかしてこの手で育ててみたいし、知り合いにも教えたい」とか言ってそのくだものの実を庭に蒔いたのだった(らしい)。 するといくつか蒔いた種の内、一本だけ芽が出たのだった(らしい)。名前こそ付けなかったが10Cmほどになると植木鉢に移植し、肥料や水を絶やさぬよう大切に育てていたのだった(らしい)。やがてその苗はすくすくと伸びて1mほどになった。地に足をつけ、社会に根をはってたくましく育っていったのであった(らしい)。 わたしの方はというとその頃他の女に走り、元い! バラなんぞにうつつを抜かし、彼女(?)のことを忘れつつあったのだった。 彼女はわたしに見捨てられた後も健気にがんばり、鉢底を砕いて「負けてなるものか負けてなるものか」と大きくなっていったのだった(らしい)。わたしは驚異的な勢いで大きくなってゆく彼女を、毎年バシバシ剪定バサミで切り刻み、そしてその存在自体を次第にうとましく思うようになっていったのである(らしい)。 「いつまでたっても花もつけず実もつけず、図体ばっかり大きくなりやがってこの大飯食らいが! いっそのこと、もう根元からチョン切ってしまうぞ」と思っていたのである(らしい)。 「ホント薄情な男ね、うすうすは分っていたけど」と妻はわたしに対して手厳しい。 「ほんとうに忘れちゃったの? 種類まで忘れちゃうのって信じられないわあ! あたしには確かプルーンだって言ってたわよ」 プルーンだと言っていた、と言われても思い出せないのである。木肌や花からして、桃やサクラの仲間だろうとは思うのだが…、なぜかまったく記憶がよみがえって来ないのである。 今年こそ、ひとつぐらい結実してくれないものだろうか。そうすれば誰の子かはっきりするのだが。……なんか怖い話になってきたねえ。 |
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