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孫の手も借りたいほどに忙しい | |||
2015年05月21日(木)「孫の手」 「孫の手」の名称が好きである。最近の若者の中には知らない人がいるかも知れないから念のために言っておくが、背中を掻くための、端っこに小さな手が付いた竹製の棒……あれですネ。 わたしにはまだ孫はいないが、その名称を聞く度にホンワカとした気分になって「なるほど、これぞネーミングの妙技なり」と唸ってしまう訳である。 名称が好きなだけであって、いつも大小の孫の手を腰に差しているとか、袖の中に仕込んであって歩行者天国とかでササッと出してお嬢様たちの背中を掻いてあげたりはしない。が、してもいいならしてみたい。 待てまて! 名称の話だった。だから「孫の手」がGoodなのであって……「赤子の手」でも「子供の手」でも「曾孫の手」でもダメよ〜ダメダメ、なのである。久しぶりに真似したワ。 粗鬆化しつつあるわたしの脳ミソであるから大した結論に至れるとは思わないが、まあわたしなりに少し考えてみた。 物の名前、特に小さな道具類の名前というのは、いくつかのパターンに分類できるような気がするのだ。 @用途、使用目的から命名されたもの A色や形状、イメージから命名されたもの Bまったくの固有名詞 C不思議ちゃん おおむねこの4種類だ。 @はごく普通、探さなくてもいくらでもある。「移植ごて」「栓抜き」「つっかえ棒」「擂り粉木」「耳掻き」「火掻き棒」「火挟み」「火吹き竹」「消しゴム」……と苦労せずともどんどん出てくる。やっぱりアウトドア系が中心になる不思議さ。 消しゴムはパターンからすれば“消すゴム”だろうが、それだとちょっとズーズー弁みたいだから止めたのだという話をどこかで聞いた。んな訳は無い。が、発音してミソ! Aに属する「孫の手」だが、よく考えてもこのパターンの奴は余り出てこない。やっとこさ探し出して「熊手」と「亀の甲たわし」と「蝶番(チョウツガイ)」ぐらいでお手上げ。 わたしの言葉のボキャブラリーが極端に低いのかも知れないが、どうだろう。 Bは説明の必要もない。「鋏(はさみ)」とか「包丁」とか「斧」「鎌」「鉈」「槍」の世界だ。まあ、わざとだけど刃物ばっかり思い付く、ハハハ刃〜だ。 「柄杓(ひしゃく)」「まな板」「箸」「しゃもじ」「鍋」「ヤカン」「お玉」エトセトラ、台所系ですね。 Cは不思議の世界だ。説明もし辛いが「青竹踏み」なんてものを例にすると分かってもらえるだろうか? 名詞なのか動詞なのか分からず頭が混乱するタイプ。しかし普通に使ってるよ、と言われれば普通に使ってるんだけど。 「今日、青竹踏みを買いました」とも言うし「ガンガン青竹踏みをするぞ」とも言う。なんか不思議。 さて、孫の手という名称だがおそらく最初は絶対に「背掻き棒」だったに違いないのだ。名称が変化していく経緯を想像するのは楽しい。 『与作ジイサンはなあ、孫の彦六をそれはそれは可愛がっておったのじゃ。夜寝る前に彦六に背中を掻いて貰っている時が一番幸せじゃったんだなあ。けんどなあ、彦六は4歳の冬に流行り病で一晩で死んでしもうたのじゃったあ。与作は毎晩毎晩泣いておったそうじゃよ。そして泣きながら背掻き棒の先に、彦六の可愛い手を思い出しながら、小さな手を刻んだのじゃった。 そして決心したんじゃなあ。いつまでも悲しんでおったら彦六も成仏できまい。よし、明日からはこの背掻き棒を“孫の手”と呼んで彦六の分まで頑張って生きて行こう、となあ』 とまあ、そんな事もあっただろうか? いい話じゃないか。 『乙女バアサンのところの孫ときたらなあ、生まれた時から背丈が160cmもあっただよ。で、熊太郎っちう名にしただが、そりゃあそりゃあ力持ちだあ。がさあ、どんだけ図体がでかくても乙女バアサンには甘えたいわけだ。で、気に入られようとバアサンの背中を掻きたがるさあ。けんど力が有る上に爪もとんがっとるけんになあ、毎晩毎晩バアサンの背中はもうボロボロズタズタの血だらけだ。痒いところに手が届くなんていういい意味の使い方もあるけんど、熊太郎の場合はただただ痛いばっかりだっちゅうのなあ! バアサンはとうとう熊太郎に背中を掻かせんようになっちまったあ。悲しんだ熊太郎は山中で自殺したさあ。2年後に発見されて、干乾びて小さくなった熊太郎の手をみて、孫の手はこれぐらいがええよなあ、と悲しげに言うたそうじゃ。供養のためじゃろうか、その後もずっと背中を掻くのに熊太郎の小さくなったそれを使っておったそうじゃあ。孫の手が見当たらん、孫の手が一番大事なんじゃあ、なんて言っておったそうじゃなあ』 とまあちょっと恐ろしいがそんなこともあっただろうか? 泣けるいい話だろう? こうして同時多発的に「孫の手」という名称が発生し定着していったのだろうなあ。うん、うん。 ん? 誰かがわたしを馬鹿にしているみたいだ、背中が痒くなってきた。 豚味噌の会の副会長、齋藤元之とその孫蒼空(そら)君とでカヌーを漕ぎにゆく。今日も体験カヌーだから距離は漕げなかったが、それはそれでゼンゼンいいのだ。 「俺もカヌー買おうかなあ」 副会長の満足度がこの一言でうかがえる。蒼空君は可愛い盛り。眼の中に入れてみたが案の定痛くはなかった。 カヌー所持歴17年になるが、漕いでいて魚が飛び込んできたのは初めてだった。ボラであった。ホラではない。25Cmぐらい。全員大はしゃぎ。蒼空君、大パニック。幼稚園を休ませた甲斐があったというものだ。ヒヒヒヒ〜ッである。 書きながら思い出したが、片方が孫の手になっていて、もう片方にゴムのやや硬いボールが付いていて、そっちでは肩を叩くようになっている物が昔有った。 あれは一体なんていう名称だったのだろう? 「孫の両手」だったら笑えるけどなあ。 |
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