ど根性の「ど」って何?
 

分かり辛いけど

確かに枇杷の木だ

たくましく育っている

枯れるなよ〜

ど根性である
2022年07月16日(土)「根性枇杷」

 いつも歩いている道の脇にある、結構大きな杉の木の上方から「ちょっと…」と声を掛けられた。わたし的には割とよくあること(電線にとまっていたフクロウが「これやる」とネズミを落としてよこしたり、天狗のような鼻を付けたカラスが笑いかけたりしたことがある。烏天狗じゃなくて天狗烏っていうやつネ)なのでそんなには驚かなかったが、見上げてみても今回はすぐには気付けなかった。地味な奴なんだろうと目を凝らしてよく観察すると、杉の木の幹から何か違う葉っぱが生えている。こいつか?…といぶかったがその辺にはそいつしか居ないようだった。

 枇杷の葉であることはわたしでもすぐにわかった。根性枇杷の可能性が高い。しかし枇杷が杉にパラサイトするなんて聞いたことがないし、そもそも針葉樹に寄生できる植物はほとんどいないはずなのである。わたしはすぐに靴を脱ぎ、杉の木に取りついて登って行った。Wモモンガ小林”と言われていた時代もあるのだ。
 鳥瞰は一瞬にして真実を語る。まあ…半ば予想通りとも言えるが、天狗烏などの仕業で枇杷の種が偶然そこに運ばれたのだろう。小さな洞に堆積した杉の葉が雨水でふやけて肥やしにもなったのだろうと想像がつく。枇杷君はガッチシと根を杉の幹に食い込ませて生きているのであった。わたしは嬉しくなった。もしかするとこれは生物学上の大発見かもしれない。寄生木(やどりぎ)などは根をくい込ませて養分をもらったりできるのだろうが、枇杷でもそれが可能なのか? それとも進化した結果なのか? 「さらなる根性で頑張って欲しい」と枇杷君に伝えたが、それ以上の会話は成立しなかった。根性の問題ではないのだろうなあとわたしは少し笑い、脇腹の膜を広げて風を受けながら隣の木まで飛び、そして着地した。

 しばらく観察を続ける予定である。この先どんどん大きく成長するようなら、きっと食べると花粉症になる枇杷なんてのが実るかもしれない。いや待てよ、食べると花粉症に対する免疫ができるという実が成るかも知れない。いいなあそれ、学会ものだ。モモンガの夢は夜開く。
 小林 倫博