ぼくはメジロのピーちゃんです。大都会の冷たい風にも負けず、椿や山茶花の花の蜜を毎日元気に吸っています。
先日季節はずれの熟れた柿の実を見つけました。怪しいぞとは思いながら近づいてつついてみると、バタンと音がして、ぼくは竹の檻に閉じ込められてしまいました。
すぐに夫婦ものらしいおっさんとおばはんが無邪気な顔をして現れ、ぼくを檻ごと別の場所に連れて行き、そしてちょっと広い竹の部屋に移しました。中には練り餌と水が用意されています。まるで新築のワンルームマンションのようで快適そうに見えましたが、ぼくはやっぱり風の中を自由に飛んでいたかったので、外に出たいよ〜と大暴れで泣きました。
二人はぼくの悲鳴を「かわいい鳴き声ねえ」などと喜んでいました。ちくしょう。
食事も問題です。最初ぼくは水だけ飲んでやせがまんをしていましたが、腹が減っては戦もできないと思い、餌をちょっと食べてみました。結構イケテル味でしたが、いつもの自然食が恋しくて結局泣いて眠りました。
次の日、おっさんとおばはんはリンゴとみかんをぼくの部屋に置いて出かけました。ここにいれば食べ物に不自由はないようです。ぼくはたくさん食べて体力を付けました。
しばらくすると小さな女の子がやって来て「かわいそうネ、飛んでけ」と言って檻の戸を開けました。ぼくは嬉しさのあまり、お礼を言うのも忘れて飛び出して来たのです。
けれど女の子のことが心配で、夕方になってからもう一度その家の偵察に戻ってみると案の定彼女は叱られて泣いていました。しかしその内おっさんもニコニコし始めたので、ぼくはやっと安心して山に帰宅したという訳です。
仲間たちの噂によると、そのおっさんも「風の中で仕事がしたい」とか言っちゃって、20年勤めた会社を辞め、今超ひまらしいのです。
まあ知った事じゃありませんから、ぼくは今日も風の中を飛び回っています。ピー。
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