自慢というより爺慢ですな、ククッ!

私の自慢
 むずかしい事は全くわからないけれど、私の自慢は自作のフライロッドである。
「フライフィッシングってお金がかかるんでしょう? 竿とかに」とよく人には言われるけれど、私に言わせれば毛ばりの材料なども工夫次第で安くできるし、トータル的には海釣りなどと比べるとかなりお金のかからない釣りではないかと思うのだ。
 さて、私の自慢のそのフライロッドだけど、何と元は川辺に落ちていたカーボン製のヘラ竿だったのである。
 フライフィッシングの唯一の短所は、なかなか釣れないのを口実にして、別のロッドやリールをついつい欲しがってしまう「過大道具依存症」のような気がするけれど、私にも確かにそういう時期があった。しかし私の場合はどうやら「作ること」の方により大きな興味が沸いてしまったのだ。
「よ〜し、世界に1本の自分用の竿を作ろう。それも恥ずかしくないやつを」
 その日から私の研究は始まった。本を読み、知識を得て準備を整えた。元は拾った竿だけど魂を吹き込んでやるのだ。元々そういうことは好きな方だったのだ。見た目だって美大出身者としてのプライドというものがあるのだ、ヨ。
 私はヘラ竿の塗装をすべて削り落とし、ナチュラルブラックのブランクロッドにした。秋葉原で低速モーターを300円で手に入れ、専用道具も自作した。回転させながら乾燥させるためのものだ。コルクのグリップも削り出し、本当に作れない部品や性能を左右する部品だけを購入した。使えなければただの自己満足の飾り物になってしまうのだ。そしてかかった費用しめて2000円、ついに完成の日を迎えた。
 して釣果は? これが冗談抜きでス・ゴ・イのである。「坊主知らず」とはその竿のための言葉だったのだ。まるで竿自身が魚を釣りたがっているようなのだ。(大袈裟?)
 私は娘としばしば釣りに行くのだが、すぐにその竿は彼女に取り上げられてしまった。
「万物に魂が宿る」なんてことはまったく信じない現代っ子ではあるが「この竿にだけは何かあるね」と今では私物化してしまった。現在は1000匹釣りに挑戦中である。
「匠」と呼ばれる自分を、密かに予感する私の今日この頃なのである。フフフ。