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染川 市五郎です | |||
2018年01月20日(土)「イチゴロウの片想い」 「遊びに行ってもいいですか?」 豚味噌の会の玲奈ちゃんからラインがきたのは昨夜の22時だ。 「毎月シフト表を渡してあるんだから日取りだけは早めに知らせてくれよ〜」と忙しい振りをしようかと思ったが、喜びを隠しきれず即マークを返信してしまった。 しかし「次は懐石料理ネ」と約束はしてあったものの、その他諸々の“お楽しみイベント”などは何〜も考えていなかったのである。焦る。 日が変わって今朝のこと、早々に懐石料理屋に電話をしてみると「申し訳ありません、本日はすべての時間帯が予約で満席なんですよ」とのこと。人気店である上に土曜日だ、さも有りなん。 彼女に報告すると「“我らがスシロー”だけでいいのですよ」と殊勝なことを言ってくれたが、2時間半もかけて来てくれるのに安直な“間に合せ接待”では男が廃るのである。 10時半過ぎ、土気駅で玲奈ちゃんを拾い、小雨の中を愛(哀?)車「ライフ」で突き進む。 「スシロー?」 「午前中はイチゴ狩り、昼食は初めての店だけどやっぱり懐石料理にした。少し運動して夕方別腹にスシローの寿司かスイーツ、どう?」 「さっすが会長、早業! イチゴ狩り大歓迎です〜」 「良かった」 「会長! 数、競争しましょう」 「競争? 懐石料理が食えなくなるぞ」 「あ〜ん、食べるために生きているのに……」 ぜんぜん意味が分からない。 ・中村いちご農園 千葉市緑区上和田町273 (043-294-7905) ・優雅亭 盛山(せいざん) 千葉市若葉区加曽利町175 (043-234-0808) ・スシロー茂原店 千葉県茂原市腰当888-2 (0475-27-1415) 中村いちご農園は10種類ものイチゴをいっぺんに食べ比べ出来て楽しかった。単品種を食べていてもなかなか分からないが、食べ比べると品種ごとの個性が際立つ。 玲奈ちゃんは全部で47個食ったそうだ。しかもでっかいやつだけを選んでだ。わたしの24個など足元にも及ばない。 「記録は108個ですかね」 「すごい! 煩悩の数だね」 「何です?」 「いや何でもない」 盛山は明るくて落ち着いた寿司屋風の店だった。さびれた茶室の佇まいを想像していたのだが、今時それじゃあ商売にならないだろう。懐石料理というよりも会席料理寄りだが、けっしてそれは悪いという意味ではない。 味や素材や調理法について話しながら、一品ずつ運ばれてくる料理を、時間をかけてゆっくりと2人同じペースで味わった。かつて無いほど多くの事をしゃべったような気がするが、対座して上気していたせいか夢心地でもう何も覚えていない。 ただ最後のデザートにイチゴのムース(フルーチェ?)が出てきたのだが、午前中にあれだけ食べたのに「わ、イチゴだ」と無邪気に喜ぶ姿がなんとも愛らしかった。 そういえばその後のスシローでも「ミルクレープメルバ」を食べていた。よっぽどイチゴが好きなんだろう。 いつもの事だが、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。 「また何ヵ月か会えねえんだな、つまんねえなあ」 わたしはいい歳をして、ガキのように別れ際をグズっていた。哀れんでくれたのだろうか、車のドアを半開きにしたまま、わたしの手を握って彼女は言った。 「会長! 大好き! また来ますからネ!」 ドキッとしたが、彼女の“大好き”は“イチゴ大好き”の“大好き”とほぼ同じだ。つまりわたしはイチゴと同格なのである。 いっそのこと“イチゴロウ”に改名してしまおうか…そう考えたらちょっと可笑しくて顔がほころび、やっと「またな!」と小さく手を振ることができた。 何をしたいのか、どうなれば嬉しいのか、考えても考えてもよくは分からない。 |
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