かなり突然だが犬が３匹になってしまった。ソラ（犬）に水をかけたらポンともう１匹別のやつが発生した、という訳ではもちろんない。映画「グレムリン」のギズモじゃないのだ（懐かしいなあ）。
午前中に掃除・洗濯などを済ませたので、午後からはゆっくりとウォシュレットの修理に再挑戦するつもりでいた。以前修理に失敗して現在使えないままになっているのだ。業者にたのめば済む話なのだが、原理がわかってなんとかイケそうなところまでやっとこぎつけたのである。もう少しいじりたい。臭いけどいじりたい。ここまで来たらもう修理魔の意地である。家族はとっとと諦めろと怒っているが「自分のケツは自分で洗え」と聖書にも書いてある。「ぬぐえ」だったかな？
あいかわらずカプサイシン多量摂取の食生活にはげんでいるのでケツの穴は慢性的に痛い。洗えばちょっと和らぐような気がする。「洗う」じゃなくて「冷やす」かもしれない。ま、そんなことはどっちでもいいのだが、便座の冷たい冬に突入したこともあってますますウォシュレットはわたしにとって絶対不可ケツの必需品なのである。
あ、急に思ったのだけどウォシュレットの「マッサージ」という機能は実に無駄だと思いますね。だってケツの方を小刻みに動かしてれば済むことだものなあ。世の中には要らないものがたくさんある。
犬の話だった。……とまあ似たりよったりのくだらないことを考えていたら外で犬が鳴いていたのだ。道路を挟んだお向かいさんの横の空き地につながれていた。しかもビーグルだ。我が家のビーグル２匹がさかんに窓から覗いておちつかない。が、お向かいの旦那さんが犬好きなので、犬は外に繋いでその飼い主さんと室内でビーグル談義でもしているのだろうとずっと思っていたのだ。
夕方になって妻が新たな情報をつかんできた。迷い犬なのだという。
「犬が迷ったらダメだろうよ！ 犬はおまわりさんだろうよ！」わたしは自分でも変なことを言っているなあと分ってはいた。明らかに取り乱していた。何か大きな力がそのビーグルをわたしのところに導いたような錯覚的気分になっていた。嬉しいような困ったような、幸運のような不幸のような、相反する２つの気分が生じたときわたしは不機嫌になるらしい。だからどうした、と言わないでほしい。
夜が近づくにつれて気温がどんどん下がっていく。もう知らないふりはできないのだ。
首輪はつけているが外飼いだったらしくけっこうきたない。妻が風呂場からお湯をバケツリレーし、わたしは駐車場でおまわりさんを２度シャンプーした。風邪をひかせないように完璧に拭き取り、何かのときのためにセットしたままになっている刑事に、もとい、ケージにおまわりさんを入れてエアコンをつけ、ちょっと上等の食事をお出ししましたね。
「いいよなあ、そんなの俺ら食ったことねえよなあ」などとソラが言っている。その一方で妻が言っている。
「パパ、なんだか嬉しそうねえ。頼むからまだ決心とかしないでよ」
けっして嬉しいわけではない。飼い主が現れなかった場合を考えるとかなり不安である。
３日前にみた夢の話だが、私は娘に「自分だけの犬が欲しい。誰にも他の人には触らせない自分だけの犬が欲しい」とダダをこねていた。幼児性が出たみたいで恥ずかしいが、あの夢は今日の予告だったのだろうか。
特に必要な訳ではないのに、予備にと思いヤフーオークションで「FLEXI伸縮リード」を買ってしまったのが“迷い込み”を呼び込んでしまったのだろうか。
我が家が無類のビーグル好きなのを知ってて、誰かが目の前に繋いで捨てて行ってしまったのだろうか？ 考えられないことではなかった。この辺りの２匹飼いの家は、その内の１匹はほとんど“保護犬”なのだ。
歳のころ５０〜６０歳（推定８〜９才だから×７倍で人の年齢にあたる）ぐらいのオジサンは今夜は我が家の食客である。一宿一飯で終わるのか、長逗留になるのかはまだわからない。なんにもわからないから彼の名はただの“オジサン”である。落ち着くと愛想がとてもよくなった。可愛がられてはいたのだネ。
「オジサンこっちこっち」「オジサンそこにウンコしちゃダメ」「屁こきオジサン臭い」「オジサン飲み過ぎ」「オジサンがゲロしたー」「オジサン歯がボロボロ」「オジサンはヤギのくそ〜」「オジサン、デブデブデブ〜」「オジサンクチ臭い」「オジサン足のつま先ちょっと違う」「オジサンがー転んだ！」「オジサン５００円返してヨ！」……。
部屋中を“オジサンコール”が飛び交っている。中にはわたしを呼んでいるのもあるかもしれないがこうなるともうはっきりわからない。どさくさにまぎれて普段言えないことを好き放題言っている可能性も大いにある。実にいい家族だ。
夜中遅くにヒーヒュー泣き出したので２時間ほど添い寝してやったのだが、どうやら腹が減っていただけのようでまたまた上等のドッグフードをペロリとたいらげた。これで一宿四飯ぐらいになった計算だ。まあ前科四犯よりいいやね、おまわりさん。
ｋｋ
