イシクラゲは「神からの賜りもの」か?
08年5月6日(火)「 イシクラゲ(石海月) 」

 雨が降って庭に水が溜まると、まばらに生えた芝生の窪地という窪地に得体の知れないキノコのようなものが発生することを先日書いた。プルプルピロピロした柔らかい緑色の丸いゼリー状のものだ。直径が1.5cmぐらいある。晴れると乾燥して触るとボロボロと壊れるが、それで消失するわけではなく、ひと雨来ればまた元通り、しかも砕けたやつが個々に増殖していやがるのである。妻があまりに気持ち悪がるので、雨の中でタガネとゲンノウでブロックの横腹に排水穴をあけた話なども先日ネタにした。以来、雨が降るたびに多量のプルプルが流れ出て消えて行ったのだが、依然その勢いは衰える様子が無い。芝生用に撒いた肥料が作用したのか色艶が良くなったようにさえ見えるのだ。
「わ……私の庭はいつかきっとあいつらに占領されるんだわ!」妻は病的にまで忌み嫌っている。半ばノイローゼ気味である。妻を心から愛しているわたしとしては、なんとか彼女を守ってあげなければならない。夫の指名というものであろう。いたわりの言葉をかけてあげなければならない。勇気の湧いてくるような、格好いい愛の証の言葉を色々と考えたが、いいのが浮かばなかった。
「悩むなって、この俺があいつらを全部食ってやるよ、アハハ」
 わたしの文章能力なんてこんなものだ。

 妻が異常な熱心さで調べたおかげで、そいつらの正体が突然わかった。「イシクラゲ(石海月)」という物体であるらしい。藻の一種である。以下「ウィキペディア百科事典」からの抜粋。

『世界各地の裸地の土の上に生育し、寒天状の群体を形成する。群体の寒天質の基質の中に細胞が1列に連なり異型細胞を交える数珠状の細胞糸が埋もれている。ネンジュモ(念珠藻)の名称はこの細胞糸の形態に由来する。イシクラゲに近縁なネンジュモ属の食用藻に清流の浅瀬の石や草に付着するアシツキ(カワタケ)や、北方ユーラシアの乾燥した草原地帯の地表に生育する変種の髪菜(Nostoc commune var. flagelliforme)が知られている。

日本では、本州中部以西、四国、九州に普通。庭先や道ばたなど様々な裸地の地表、コンクリート面などで見られ、雨が降った後に藍緑色寒天質の膨潤した群体が突然目立つようになるため気味悪がられる事も多い。乾燥状態では地面にへばりついた黒いかさぶたのように見え、手で揉めば小片-粉末状に壊れる。

日本で古来から食用にもされ、丁寧に付着した土や枯れ葉などを除去して湯通しし、酢の物などにして食べる。別名にイワキクラゲ(岩木耳)や姉川クラゲ(滋賀県姉川に因む)など。

中国では変種で細長い髪菜が煮込み料理の素材として珍重されてきた。主に、「発財」(財を成す)との語呂合わせによるものであるが、乱獲が環境破壊を進めるとして、2000年に採取や輸出が禁止された。また、本種は葛天米、或いは天仙菜と呼ばれて古くは漢方で生薬として用いられた事もあり、試験管レベルで抗腫瘍作用や抗ウイルス作用も確認されている。』
 
 芝生の多いゴルフ場などで時々大量発生するらしい。我が家の庭も大部分が芝生であり、どうやら造成した際の土にその種菌がいたものと想像できる。
 食いたくねえなあ、気持ちわりいなあ、舌に乗せた感じを想像するだけで下呂しそうだなあ、バクテリアみたいなもんだから消化されずにウンコにもそのままの形で出てきそうだなあ、かといって噛み砕きたくはないしなあ、腹の中で増殖したら体中の穴という穴から芽を出しそうだ。体が緑色を帯びてきて“超人ハルク”みたいになったら仕事もできんしなあ、上司に何て言おう。仮に上司が許してくれても女子が遠くから臭いをかぐ真似なんかしちゃって辛いなあ……。
 
 水できれいに洗浄してから、さらに1時間ほど水に浸けてプルピル感を熟成(?)させてからいただくことにした。湯通ししたが色もあまり変わらない。妖怪め! ウッ、ウン????……臭いは夏の“草いきれ”そのものだ。味は……無い。するのは“ポン酢”の味ばかりだ。そうだなあ……例えばくそ暑い夏の日に冷蔵庫でキンキンに冷やしておけば帰宅するのが楽しみになるかも知れないなあ。トコロテンだと思えばいいことだ。和ガラシなんかあると気がまぎれる(?)。
 いやいや……待て待て、逆転の発想と行こうじゃないか。 
 現在わたしはダイエットのためにひたすら炭水化物をひかえ、豆腐とバナナをメインに食している。そして、これはそんなわたしに神が与えたもうたチャンスなのだ。痩せられる上に、「イシクラゲダイエット法」という本も大ヒットして、めでたく憶万長者にしてやろうという神のおぼしめしに違いない。そうか、そうだったのか……わたしは納得した。
「使ったシェラカップは絶対捨ててよね!」と妻は言い、その場で鳥肌をたてて倒れた。




              




mk

乾燥状態

水で戻した

ポン酢は万能である
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