写真はクリックすると大きくなります

鳥食いたい鳥食いたい

あっちにもう一匹いるぞ

昔撮ったデジスコ写真

野菜畑を荒らすのだ

頭はかなりいいのだ

2014年3月3日(月)「 ヒヨドリの味 」

 夕方の散歩で犬が突然何かに反応して走り出した。もともとビーグルは狩猟犬だから何か見つけると歯止めがきかない。さらにうちのはデカイ(普通の1.4倍ぐらい、17〜18Kg)から、妻などは簡単に引き倒されて体中にいつも痣(アザ)を作っている。
 農道脇の小さな野菜畑の奥の方でバサバサと鳥が暴れているのが見えた。ヒヨドリが2匹、何かに絡まって飛び立てずにいる。近寄ってみると廃棄された防鳥網の網目に首を突っ込んでしまい、もがくうちにさらに縒りがかかって抜けなくなり、いずれにしてもわたしたちが気付かなかったら、あと数時間の命であったろうと想像できた。
「今夜の酒の肴にちょうどいいなあ、今は油も乗ってる」
「美味しいの? ジューシー?」
「雀なんかより数倍美味いね、肉も多いし頭ごとガリッって噛むと脳みそジュルっと出てジューシーだねえ」
「一言でいえばどんな味?」
「ヒヨドリ味」
 犬は鼻っから食う気でいる。妻も“ヒヨドリ味”ってのに興味が沸いたようだ。珍しく残酷な目になっている。食がからむと女はわからないものだ。獲ってもいい狩猟鳥に指定されているが“日本野鳥の会”の皆さまには、ごめんなさいなのダ。

 小学4〜5年の頃、暮らしていた鹿児島の村で空気銃がやたらと流行っていて、わたしはよく近所のおじさんの狩猟のあとを付いてまわったものだ。そしてたまには犬のように獲物の回収を手伝ったりしていたから、帰りぎわにおじさんはヒヨドリを2〜3匹くれるのだった。「とうちゃんのツマミにって」とかあちゃんにそれを渡すとちょっと嫌な顔をしながらも、祝い事の日に庭で飼っていた鶏を潰すのと同じ要領でヒヨドリをヒヨドリ肉に変えてしまうのだった。
 まあそんな経験があるので、ヒヨドリは美味いことをわたしは知っているのだった。ガハハ、田舎万歳。

 話は急に変わるが、どこにでも、いくらでも、たくさんいるように思われているヒヨドリだけど、実は日本以外ではほとんど見られない鳥なのである。台湾あたりに少しいるぐらい。で、外国のバードウォッチング愛好家の間で「日本に行ってもっとも見てみたい鳥」のナンバーワンにランキンクされているのだ。
 さらに意外と知能が高くて、ヒナから飼育すると人の顔を見分けてそれぞれに違う反応を示すほどらしい。毎日餌をくれる人には尻尾を振り、籠をたたいて脅かすようなやつには近づいただけで叫びまくるなんてことだろうと思う。とくに平安時代の貴族たちの間で流行したらしく、ちゃっかり和歌などにも読まれているのだ。抜け目のない奴なのだよ。

 
 ヒヨドリについてのウンチクを知ったかぶりで妻に話したのがまずかった。
「あたし……食べなくてもいいや。ヒヨドリ味、知らなくてもいいや」
「え? なんでなんで?」
「毛むしるの嫌だし、パパも毛をむしられるのいやでしょ?」
「そりゃまあそうだけど……。あんまり毛も無いし……」
「人間の顔を見分けられるんでしょ? 逃がしてあげようよ」
「………」
 
 犬が怒っている。後ろ足で土を蹴飛ばして怒っている。なぜか関西弁だ。
「そういうのを“恩返し目当て”ちゅうんじゃないのかい? え? キャベツか白菜持ってくんのがせきの山やぞ。俺らが見つけたんじゃぞ! あん? 今夜のおやつが消えてしまうやんけ、どないしてくれるんじゃボケ! イテ込ましたるどワレ!」

 スマンスマン。今「岸和田少年愚連隊」(中場利一)を読み返してるもんで。





                  






mk
我が家の犬は愚連隊なのだった 
Yahoo!JapanGeocities Top