2011年12月04日(日)「 久しぶりの海 」
娘が“動物愛護ボランティア”のブログを見つけてしまった。つまりだ「里親求む!捨てられたビーグルの兄弟2匹、○月○日殺処分予定、至急メールください」みたいなものである。
以前同様のブログで猫を助けたことがあったが、娘はこの手の“救いを求める声”に極端に弱いようだ。
もちろん反対した。現在犬1匹に猫4匹、餌代だってそれなりにかかっている。さらに犬が計3匹ということになれば、人間様の生活もあやしくなるかも知れない。それに毎日散歩を2度に分けて行くことになりそうだし妻の負担がさらに大きくなる。そして今、家族の愛情を一身にうけて育っている空(犬の名)がちょっと不敏である。彼はペットではなくてわたしの一人息子なのだ。
犬種がビーグルであることにはかなり魅力を感じるし、空の友人として迎えるという考え方もある。次の正式の飼い主が決まるまでの暫定的里親だと娘は強調したが、一度預かってしまったら情が移るのは目に見えている。わたしはあくまで「反対」で押し通した。
しかし娘はわたしを無視し、すでにボランティアに連絡を入れてしまっていた。妻も結託しているのだろうから、つまり女どもで「やった者勝ち」を実行した訳である。わたしには事後報告であったし、おまけにメールだったので腸(ハラワタ)が煮えくり返ったが、わたしは仕方なく「了解」とだけ返信した。
日を追うごとに事情が少しずつ変わってきた。預かるのは1匹、空との相性も考慮されてオス犬、餌代などの補助もボランティアから支給されることになる等々、色々なことが次第に分かってきた。
「命を救ってあげられて良かったなあ」という気持ちが強くなってくる。「一緒にじゃれ合える友達が来るぞ、空!」などと、家族全員で彼の到着を待ちわびるようになって行った。きちんと検疫を済ませてからお渡ししますという連絡をもらって「しっかりしたボランティアだなあ」と好印象まで持ち始める有様。
妻と空とわたしの3人で車に乗った。久しぶりにノーリードで海を走らそうと言うわけだ。水がもう冷たいだろうからと、わたしは午前中に長靴を新調した。
海まで1時間、わたしは助手席で空の体をがっちり掴み、そして支えながら彼に話しつづけた。
「あのなあ空(ソラ)くん、お友達の事なんだけどなあ、名前も海(カイ)くんに決めてあったんだけどなあ、病気にかかっていないか調べている間になあ、兄弟2人とも突然死んじゃったんだってさあ。予防注射なんかもぜんぜん打ってもらってなかったみたいでなあ、ひどい話なんだけど、まあそういうわけなんだなあ……」
妻は唇を尖らせて押し黙って運転した。
空もすべてを理解し、辛そうな顔をした。しかし窓を少し開いてやると、会うことのなかった海くんのことなどあっさり風に飛ばしてしまった様子で、これから行く本物の海に鼻を向けてヒーヒーヒクヒクと鳴き続けた。
mk
犬はノーリードで走らせたい
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犬がすべてにおいて優先する |
けっこうマッチョな胸だ |
お金を掘るように言うのだけど |
ほかより耳が長いね |
腐ったイカを食ってしまった |