2013年7月17日(水)「ヘリオスが来た」
グモテックスのインフレータブル(空気注入式)カヌー「ヘリオス380」をヤフーオークションで¥8260で落札した。古いし、剛性さには乏しいし、あんまり格好よくもないし……と諸説色々ではあるが一応“往年の名機”ではあるらしい。
リサイクルショップからの出品だったのであまり詳しい人が居なかったのだろうか、出品物のタイトルは「GUMOTEXグモテックス カヤック?ボート?★緑色★ジャンク」となっていた。オークションでジャンクといえば“使えるものかどうかわかりません”“壊れもの”“たとえ欠陥品であっても返品はできません”“クレームも受け付けません”というお約束である。買う側にとってはかなりリスキーで、それなりの覚悟しなければならない。おまけに商品説明は「※水漏れや穴などの確認は行っていません。正常に使用出来るか保障できませんので、ご理解ご納得して頂ける方のみのご入札となります。少しでもご心配な方はご入札をお控えください。画像が全てとなります。画像をご確認の上ご入札をお願いします。傷や汚れ、塗装の剥がれ、ほこりなどかなりあります」と、これだけだ。
無駄とは分かっていたが質問蘭に「写真からしてグモテックスのヘリオスというインフレータブルカヌーだと思いますが、これには全長が380Cmのヘリオス380と340Cmのヘリオス340という2機種があります。そこで質問ですが、船体布の内側にチェコ語(チェコスロバキア語)で機種名・その他のスペックが印刷されているはずですので、その写真を追加してはいただけないでしょうか?」と書き込んだのだが返答らしきものは一切無かった。
グモテックスといえば2年前に「サファリEX」というのを買って愛用しているのだが、これは一応激流用であって転覆した際に水を自動排水すべく船底に多数の穴が開けてあるわけ。セルフベイラーというのだけどこれが転覆しなくてもけっこう水が入ってくるのだ。なのでちょっと涼しくなってから静かな秋の湖面をのんびり紅葉でも愛でながら漕ぎたいな、できれば船上で燗酒などいっぱいやりたいなあ、などというのには全く向いていない訳である。お花見カヌーなんてのももう最高なんだろうと思う。季節的には暑くもなく寒くもなく最高の気分に違いないんだろうが、人間というものはやっぱりケツの穴が濡れているとダメなようで「もう帰っちゃおうかしらわたし」「痔になったらいやだわあキャー」なんてちょっとオカマチックに考えるものなのである。だからヘリオスなわけですよ。バイクに積めるのも絶対条件だ。
リスキーを承知で購入に踏み切ったのは補修技術に自信があったのと、ジャンクだから入札者がおそらく少なかろうと踏んだのと、ヘリオス自身が「助けてコバサ〜ン!」と言っていたからである。
色褪せが激しいとネット上のブログにあったので、おそらく船の上面は赤紫だったはずで、それが薄緑の地の色になっているということは幾多の男どもに相当にコキ使われて、身を粉にして働かされて、挙句の果てに見捨てられてジャンクに身を落とし¥5000スタートで売りに出ている……嗚呼なんということ。心やさしいわたしは「苦境に立たされている昔の女」を見るような気分になって何がなんでも力になってやりたくなった、という訳なんだなこれが。
17日、ヘリオスが来た。なんと、めでたく全長380Cmのヘリオス380であった。40Cm得をした気分である。8畳間にやっと入る大きさで、けっこうでかい。基本は2人乗りなのだ。ヘリオス380EXという船体布が厚くなった改良型のものがあるが、もうもう文句なんか絶対に言いませんことヨわたし。で、これは旧タイプ。正式にはヘリオス380ラックスという。乗り心地がブニョブニョしていると言われているけれど、わたしはだいたいが静水域を漕ぐので特には問題はない。薄いとはいってもビニールカヌーとは違い布自体は丈夫そうで岩でこすっても破れたりはしないらしい。カナダの国立公園警備隊も使用していた(らしいよ)、ある意味実用一点張りのカヌーなのである。ブニョブニョしながらも激流を安心して下れる信頼性、と所有者の意見がネット上にあくさんあるのだ。たのもしい奴なのである。
空気を入れた。でかい穴は無さそうだ。2時間放置して1つの気室がわずかに減圧したので詳しく調べると、バルブ回りからの空気漏れを発見した。バルブキャップのゴムパッキンと本体バルブの接触部分に0.5mm程のプラスチックの欠けがあった。しかしこういうのは簡単で瞬間接着剤で盛り付けして乾かし、その後本来有るべき形に削って成型すればいいだけだ。で、空気漏れはめでたく止まった。機能的には何の問題も無くなった。
思った通り上面の色は赤紫だったようで一部その色が内部の紫外線に触れづらいところに残っていた。わたし的には退色後の色合いの方が好みである。フットレスト(オプション品)まで付いている。申し訳ないほどのお買得である。ヤレた感じが実にいい。子供の頃からずっとそうだが、わたしは「新品」が恥ずかしい性質である。
英語で船の意味の「Ship」は確か女性名詞だったような気がする。とすると「ずいぶん経験を積んできたのだな、この彼女は」とわたしは喜びに打ち震えながらおめでたいことを考えたりした。
マイペットで全身を拭き、シリコンスプレーでピカピカに艶を出し、頭の先から足のつま先までくまなくいやらしく撫で回してあげると彼女は言ったネ。
「昔もさ、一晩中よくそうしてくれたわね」
暑くてさ……暑くて、脳みそがとろけちまってんだよ〜!
mk
鯛の浦でイカがバカバカ釣れてるらしい。こいつとなら行けるかも知れない。