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タマゴだけで過ごした正月があったなあ


こんな所にある

きれいなのだ

名前のゆえん

崖登りは大変

亡霊茸?

ちょっと干してから
2015年09月22日(火)「 初めてのキノコ狩り 」

 朝の犬散歩でとある山道を歩いていると、横の藪からゼエゼエ言いながら“タマゴ茸(タケ)ジジイ”がいきなり飛び出してきた。犬は驚き庭駆け回り、わたしは腰が抜けて丸くなった。なるかい!
 よく観ると手に萎びたタマゴ茸を持っている。
「これ、知っちょるけ〜?(古いね)」
「知っちょらん〜!」
「タマゴタケっちゅうてなあ、崖を降りたところに、昔はようけ生えちょったもんさあ、今はさっぱりだがあ〜」

 学芸会のようにしゃべるジジイは江戸時代からタイムスリップして来たのか思えたが、ラコステのポロシャツを着ているから違うんだろうなあ……などと考えていたらふとあることを思い出した。以前興味を持ったキノコのソフトストラップ(2013.05.23)の見本の中に確か“タマゴタケ”っちゅうのがあったことをだ。

「食えるんか〜?」
「あたりき、しゃかりき、カッパのパ!(これまた古いね)絶品中の絶品よ!」
 ジジイは萎びたタマゴ茸を、それでも大切そうにバッグに入れて「卵が先かタマゴ茸が先か、またまた分りませぬのうジジイはフフフ」などと言いながら立ち去ったのだった。

「タイムスリップしちまえ!」と毒づきながら山道を下っていくと崖の上に赤いものがチラと見えた。群生とまではいかないが見える範囲で20本以上はある。
「ジジイ、こっちだったぞ〜!カッカッカッ」
 わたしは笑いが止まらないほど嬉しくなってスマホで写真を撮りまくった。が、ズームがショボイのでなかなか上手くいかない。
 そうしている内に下から品のいい吉永小百合似の奥様が登ってくるではないか。
「奥さん、タマゴ茸ですぜ〜、知っちょるけ〜?」
「知っちょらん〜!」
 普通の女性なら逃げ出しそうなものだが、さすが小百合似、腹が据わっている(?)。
「タマゴタケっちゅうてなあ、ほらほら見て味噌、白いタマゴの殻みたいなやつから赤いのが生えてきてるじゃろう。やっぱりタマゴが先じゃったのじゃなあ、オ〜ッホッホ。タマゴより美味いのでごじゃるよ、オ〜ッホッホホ」
「…………」
 あの奥様は家に戻り、きっと家族に言ったに違いないのだ。
「今日さあ、タマゴ茸ジジイに会ったのよ〜!」


 家に戻り、犬を置いて、カメラを持って、バイクに跨ってさっきの崖に向かった。もちろんキッチリ“タマゴ茸”をググってからだ。「味も香りも温和」とある。マジで食おう、食わねば男がすたる。わたしは決心した。
「待っておれよタマゴタケ〜! 走れメロス、怒れポンチ!」
 崖登りはかなりこたえたが、(崖の)上の段にはさらに多くのキノコがあったのだ。多種多様、いかにもヤバそうな(楽しそうな)ものもあったが、今回はタマゴ茸だけにとどめることにした。
 
 傘の部分がもろ過ぎて、持ち帰った時には崩れてしまっていたが、まあ食えないことはないだろう。似たものも多いそうだから、本当のタマゴ茸かどうかは分らないが食ってみないと話として完結しねえもんなあ。
 色がなあ、かなり毒っぽい。

 Webに有ったとおり、焼いて唐辛子醤油をつけて齧ってみた。
「う〜む、よく言ったものだ。温和とはこのことか? 言い方を変えれば無味無臭だ。醤油味に近い。醤油をかけたんだっだ」
 

 来年は見つけても採らないと思う……というのがわたしの正直な結論である。
 夜になって自分の玉子が大きくなる夢と、職場の“喉に玉子を持つ男”の夢をみた。ちょっとだけ幻覚作用があるのかもしれない。