ガーデン・ドランカー
2010年1月30日(土)〜2月5日(金)「 ガーデン・ドランカー  」

「“寒い冬こそ庭に出る”っていうのが“ガーデナーの極意”なのよ」と妻は偉そうなことを言った。
 バラの栽培に凝っている彼女は、春夏秋の美しい花を見るには冬の間の剪定や植え変え、蔓バラの刈り込みや大枝の倒し込みなどがいかに重要か、と力説するのである。
「ちゃんとした(大型の)バラ棚を作りたいんだけど、手作りで私にできるかしら?」
 去年の暮れからずっと悩んでいたようだった。素材、大きさ、形などについてだ。わたしは、素材は木材が楽だろうと助言し、手伝うよと言ってあったのだがなかなか実現しないでいたのである。
 うかうかしているうちに1月は逃げ去り、バラの枝には新芽が出始めた。わたしが近々にブドウ棚を作り替える予定なのを知って、急ぎ自分のバラ棚も作ってしまおうと考えたようだった。木材の購入、運搬用トラックのレンタルなど、その方が何かと都合がいい。
「いい機会だから電動工具の使い方も教えてよ、他にも飾り棚などをいろいろ作りたいし!」
 実にいい心がけである。大工仕事ができる女性ってカッコイイ……と思うのだ。

 庭にミカンやピーナツリングを置くようになってから、いろいろな鳥たちが集まるようになってきた。メジロ、ヒヨドリ、シジュウカラ、ツグミ、ジョウビタキなどだ。妻も小鳥がおおいに気に入ってしまったようで、今や我が家の居間は「バードウォッチング・カフェ」である。わたしにとっては「バードウォッチング・バー」
だ。窓にかじり付きである。しかしだ、どうせならガラス越しじゃなくて、寒くても庭で直接小鳥と遊んだ方がいいような気になった。で、丈夫なテーブルと椅子もついでに作っちまおう、となったわけである。
 アメリカのディズニーランドで、小鳥やリスが人の手から餌を食べる様子が忘れられなかった。感動的ですらあった。あれを目指す訳なのである。リスは居ないから無理だが鳥類はなんとかなりそうだ。メジロは最近1mの距離でも逃げないし、写真は撮り放題、デジスコ不要である。ポーズまでとってくれて「チーズ!」とか言うし。

 冬の庭仕事には火が欠かせない。大工仕事で出た端材を一斗缶でガンガン燃したいところだが、煙モクモクだと近隣がうるさいので甘んじて炭火で我慢することにした。芋、千葉の名産“イワシの味醂干し”、餅、肉類、焼けるものはなんでも焼く。鶏肉を頬張りながら野鳥を愛でる快感、言うこと無し。気分良く飲む酒は一向に効いてこないので、絶え間無くダラダラ飲む。いつかアル中になるかも知れない。気をつけよう。
 庭のいろいろなものが完成に近づきつつあった4日、わたしは悦に入りながらまた庭で炭火に当たりながら飲んでいた。そして、娘からのメールで朝青龍が引退したことを知ったのだった。
「腹を切れ、さもなくば打ち首だぞ」と突きつけられた格好だったのだろう。一連の彼の所行は決して誉められたものではないが、とてつもなく巨大な力が底辺でうごめいた気配があるのが腹立たしい。今回の暴行事件まで陰謀の匂いがしてくる。何から何まで不透明だ。なにが国技だ、なにが横綱の品格だ。少数派にかけられる多数派の圧倒的なパワーというものはだいたいが悪である。
 庭で炭火をいじりながら、突然不愉快になった。パーッと木材を燃やして煙をモクモク出してやりたくなった。
 いつか「許してあげたい人々」というコーナーを作って書きたいものである。なした罪よりも、持てる魅力の方が大きい人物は多数いる。彼にはお手軽な格闘技の世界などに行かず、是非モンゴルの大統領になって、波風嫌いの日本の水面にもう一度一石を投じていただきたいと思うのである。
 コップ酒を一気に飲み干した。朝青龍という名の素敵な鬼を、わたしたちはもう2度と土俵の上で見ることはできない。

 
 

 
              




mk
※写真はクリックすると大きくなります
ブドウ棚作り替え、最初の一歩です。来年は絶対ブランディーを作りたい
電動ドライバーは充電式でないものがお勧めです。ただし庭で使うのならネ

ペンキを塗る作業は楽しい。だってもうすぐ完成だからだ。だからこそ面倒臭い。

いつもこのぐらいの時間になってしまう。テーブルは無計画で20分で作った。

シジュウカラは英語でチッチという。鳴き声も「チッチ」なのだが結構関係あるようだ

ヒヨドリです。意地悪だしメジロを追いかけるし、いいところは無い。食うと美味い。

ミカンの大判振る舞いです。その横の餌台は結構かわいいでしょ?シジュウカラ用

電動工具。これ無くしてはもはや考えられない。電動ドライバーは必須アイテムだ。

ナショナル製バーベキューコンロ。群馬梅田川の川原で拾ったものだ。いいよ。

「オッカー!手がきたねえぞい」と言うと、「心が汚いよりずっとマシ」と返された。

「高見の見物!」と言いながら、娘は何も手伝わない。冗談を言うのも手伝いか?

色々と出来上がった感じです。前日に猛烈な風が吹いたが、なんとか大丈だった

バラ棚は結局簡単なH型に落ち着いた。小さな改良が続く。それが楽しいらしい。

わたしに言わせれば、それがどうしたの?の世界だが女性の感性は無視できない

仕事から帰宅すると色々なものが出来ている。大工仕事のできる女はいい。
Yahoo!JapanGeocities topHelp!Me