17歳の春、深夜の映画館で「良からぬ輩」に尻を撫で回されて以来、ちょっとねじれたハートを持つようになってしまった。
何かにつけて「変わったもの」「少数派」の方にこそ食指が伸びてしまうのだ。
「ホンダスーパーカブ」を主役にした、旅の映画を作ってみたい……微妙に本気だったりする。1988年「ビーパル9月号」に、カブとフェリーで東京湾を渡り、房総半島を遊びながら旅する記事が載った。心が動いた。動き出したらもう止まらない。
2週間後、右折が恐くてだいぶ遠回りはしたけれど、バイク屋から「おれのカブ」に乗って帰って来た自分がいた。
早朝2時間乗ってから出勤し、帰宅してからまた2時間、妻と娘は呆れたけれど「犬だって毎日散歩が必要、カブも毎日運動させなきゃ不健康」と屁理屈でねじ伏せた。
カブの出てくる映画というと、椎名誠氏の「あひるのうたがきこえてくるよ」(注、小
沢昭一さん扮する郵便局員が乗って登場する)ぐらいしかぼくの記憶にはないけれど、違うんだなあ! もっとストーリーの中心に「カブ」が居なければダメなのよ……と思う。
『主婦の順子(仮名)は、ほんの近所までのつもりでカブに乗ったのだけど、郊外の川原や畦道を走るうち、あまりの気持ち良さにどこまでもどこまでも行けそうな気になった。既に戻れない程の充足を感じたのだ。人との出会いもまた楽しかった。
ある日、スケッチをする老人が「霞がかかってもう描けない」と嘆く。ちょっとだけ作って描けば? と言うと「はっきり見えないものをクッキリ描いてはいけない」と諭されたりするのだった。途中、無駄なダム建設と戦う野田という人や、耕運機で旅をする斎藤という男とも出会ったりするのだが、そんな旅を続ける内に「本当に行くべき場所」が見えてくる。さあ! 果たして彼女の運命やいかに……』
本田技研さん、お金出しません?
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