読書の季節?
食欲の季節、レジャーの季節は何処に行ったんだよ!
2012年09月某日「 9月は読書の季節 」

 庭の熟れ過ぎた葡萄の実を始末していて蜂に刺されたり、伸び過ぎたナニワノイバラの枝を切ろうとして脚立ごと倒れて腰を強打してしまったりと、最近まったくロクなことがない。しかしながら、丸々と太ってはいたが蜂は足長蜂でスズメ蜂ではなかったし、腰の具合もヘルニアの悪化にまでは至らなかった。“ぎりぎりセーフ”というのは、やっぱりわたしの普段の行いがいいからだろうか。

 普段の行いがどれだけ良くてもお天気だけは別物らしい。休日というと決まって雨である。まじめな話、今年は本当に巡り合わせが悪い。以前にも書いたが、わたしの先祖は「鮫島」姓で薩摩の海賊である。こじつけのような気もするが、“鮫”がそうであるように、わたしもじっとしていると息が詰まって死んでしまいそうである。ハゼ釣りもカヌー製作も“やらなきゃならない事”(?)なのに。

 凹んでばかりもいられないと、ある日猛烈に降る雨の中を気合(!)で“ブックオフ”へ行った。ご存知、中古本の本屋さんである。そしてそこで「ネパールのビール」という一冊の文庫本を見つけた。飲欲をそそられるタイトルだがグルメ本の類ではない。日本エッセイスト協会編集の「1991年版ベストエッセイ集」である。著名作家から一般主婦まで、つまりプロアマ問わず、その年に発表されたエッセイの中から、約60篇前後の優秀作品を選んでまとめたものだ。税込¥100だった。

 1.60数個の他人の人生(生活?)を、一度に覗き見できる気分である。
 2.多種多様の職業の人の文章なので“ネタ本”としても面白い。超博学になる。(例:“忠犬ハチ公”の話が
   100%創作だったということ知ってましたか?)
 3.つまらなそうな話題でも、短文なので最後まで読む。結果、実にいい話だったりして得した気分。

 以上のような点ですっかりベストエッセイ集に“はまって”しまった昨今なのである。通勤時はもとより、野外でも屋内でも読書である。空(愛犬)はつまらなそうだが仕方がない。しかし1983年創刊のこのシリーズ、現在まで29冊あるのだが、古いものがなかなか入手できないでいる。オークション等で集めまくってはみたものの、現在まだ12冊。ポケットにいれて持ち歩くので文庫でなければならないし、文春文庫に定価で注文するのもなんだかなあ……。というわけで現在、再読と蒐集の同時進行中なのである。ダブッてもいいので不要ならどなたかまとめて譲ってはもらえないものだろうか。

 
 何年かの周期で猛烈に本を読んだ時期というのがこれまでにも何回かあった。きっかけはもちろんそれぞれにあった筈だが、それは思い出してみてもあまり意味はない。しかし今回の“マイ読書ブーム”には、思い当たる節がある。
『もしかして、自分には、何か人間として決定的ながものが欠けているんじゃないだろうか?』
 最近、頻繁にそんな考えが脳裏をかすめることがあったのだ。あまりに広義で唐突で漠然とはしているけれど、だとすればこれまでの“詰めの甘い”人生・作品・言動・思考等が全て納得できる気がしたのだ。考え始めると空しさを伴う事が多いが、かといって死ぬほど落ち込んでしまうというほどではない。そもそもそれが半端だが、おそらく過ぎし日々の“中途半端さ”に情けなさを感じているのだろう。駄洒落じゃないが、半生の反省をする年頃なのかもしれない。

 全てのベストエッセイ集を手に入れて、約1740個(60編×29冊)の他人の感動ストーリーを覗けば、もう少しまともで深遠な境地に立てるかも知れない。かつては歌、今は文章と絵、このままでは「好きこそ物の下手の横好き」止まりである。
 



               




mk
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