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欲を出してはいけないよ

春の海です

貝殻ばかり

手伝えよ

これは大きくならない

まだぜんぜんだ

何でございましょう
2018年02月10日(土)「ビーチグラスを拾いに」

 我が家の洗面台には白い小皿が置いてあって、中にガラスのカケラが1個だけ入っている。砂に揉まれて角の取れた薄緑色のそれは、よくは知らないが妻が遠い昔、海から拾ってきたものらしい。
 皿自体は洗面槽のゴム栓を置くためのものだが、黒ゴムの塊がその薄緑色のおかげかあまり不粋には見えない。わたしはいつも「小洒落たことをしおって(武士か!)」と笑いながら感心するのである。

 調べてみると「ビーチグラス」もしくは「シーグラス」と呼ばれているものらしい。検索すると「湘南・主婦が拾い集めて販売・月の売上げ50万円!」なんて見出しも有って、欲望のアンテナがピクリと反応したりする。が、いくら何でも50万円は眉唾だろう。出所はテレビらしい。とは言っても、メルカリやオークションでも出品されているので、手作りアクセサリーなどに需要があるのかも知れない。人工的にも作れるだろうが、やはり天然もの(?)の方が形や擦れ具合が魅力的だ。

 暖かいので犬2匹をつれて九十九里に行くことにした。当然ビーチグラスを大量に入手して一儲けするためだ。ビーグル犬は人体の癌も見つけられるほど鼻が利くからビーチグラスなどお茶のこさいさい。「ここ掘れワンワン」ってなものだろう。
 30mの細いロープで2匹を繋ぎ、砂浜に放って適当に遊ばせる。わたしはというと、目を皿のようにしてお宝探しだ。時々犬が騒ぐので見に行くと、ビーチグラスどころか犬猫のミイラだったり亀の甲羅だったり。まったくもう役立たずめ!

 1時間ほど歩いてみて結局諦めた。何個か拾い集めてみたが全てがまだ浅いのだ。漬け物じゃあないから“浅い”は変だが「あなたも、あなたも、もっと世間に揉まれていらっしゃい」ってな奴ばかりだ。表面は磨りガラスになっていても角はなかなか丸くはならないようだ。一口にビーチグラスと言っても長い長い年月がかかっているのだなあ。

 夜、今日の宝探しが無駄だった事を妻に話すと、笑いながら「ああいうのは一つがいいのよ、思い出と同じよ」と言った。よくは分からないが妙に哲学っぽい。
 わたしは洗面所の青緑のガラス片を思い浮かべながら、しばらく妻の“思い出”とやらを空想し少しだけ嫉妬した。