「 アンドレを見た 」
 
 最近テレビで、2m50何cmとかの超大男が小さな女の子たちとソファーにかけてチョコレートか何かをつまんで食べている……、そんなシーンを使ったコマーシャルを見たのだ。それで思い出した。
 とてつもなく大きな生きものというのは、象にしても鯨にしてもそうだけど(余談ですが、ツアー移動中に北海道で牛ぐらいの大きさの白豚を見た時、わたしは腰を抜かしましたネ)、もうただそれだけで面白く、見ているだけで感動的ですらあると思うのだ。  
 ましてそれが自分と同じ種・属である人間となると、もう一挙に感動を通り越して、自然に、ごく自然に笑いだしたくなったりする。
 キオスクの屋根から頭を飛び出させたアンドレ・ザ・ジャイアントを見つけたのは、わたしが吉田拓郎の全国ツアーに前座として同行していた折りだった。
 わたしとギターリストのTさんとマネージャーのSは新幹線東京駅のホームにいた。特にざわめきのようなものがあった訳ではないのだけど、何か圧迫感のような異様な空気を感じて振り向いたのだった。そしてそこに、まさしくそこに、2m30cm強のアンドレがじっとわたし達3人を見つめて立っていたのだ。
 でかい! ほんとにでかい! 高校生のとき高見山と握手をしたことがあったが、それの数倍でかい……ような気がした。
 ほんとうに笑えた。訳もなく、意味もなく笑えた。
 キオスクのおねえちゃんは、売店の間口がアンドレの股間でふさがってしまっていることで笑っているようにも見えた。
 やがてざわざわと人が集まり、キオスクをぐるりととり囲んで人の輪ができてしまった。それでもアンドレはわたし達3人をヌボーッと見つめていた。
 ギターを持った2人の男と一緒にいるマネージャーSを「歌うプロレスラー」もしくは「同業者」と勘違いしたのじゃないか、と思うのだ。
 実はSも身長180cm、体重130kgの、アマレスチャンピオン経験のある中?巨漢だったのだ。
 もっと眺めていたかったけれど、発車のベルが鳴った。
 Sの発案でわたし達3人は、おもいっきりでかい声で「ポッ、ポッー」と言い、ジャイアント馬場の真似をしながらアンドレの横をすりぬけて、逃げるように新幹線に飛び乗った。
 アンドレは地響きを立てながら突然走り出し追いかけてきた……ウ〜ム、それは嘘850ぐらい。