5秒間のエクスタシー
07年5月23日(水)「 5秒間のエクスタシー 」

 半日暇ができたので釣りをすることにした。バイクで30分ほどの管理釣り場でマスでも釣って薫製にでもしようかと考えたが、出かける段になってにわかに風が吹き始めた。フライは風の影響をもろに受ける。はるばる群馬辺りまで出かけて行って、まったく釣りにならず足だけ川で洗ってくるというような苦い経験を何度もしている。フライフィッシングがわたしを大人にしたのだ。(クックッ)
 で、夜の酒の肴はあきらめてタモロコ釣りに急遽変更した。バイクに常時積んである小物釣りの道具でOKである。餌のミミズも現地調達だ。「散歩の途中に水たまりがありましたとさ。道具があったので竿を出すと、ホ〜レ、小魚が大漁でござるよ!」てな釣りである。ようするに“ガキの遊び”である。最近はガキもやらない…ようだ。

 バイクで20分、浦和新宿(にいじゅく)に到着。川は芝川、農地の真ん中を流れているが、生活排水もしっかり流れ込んでいるので立派な第一級汚水河川である。しかし遥か利根川とつながる“見沼用水路”からの流れ込みも多いので、その流入溝周辺だけは水がきれいで魚種も多い。ブラックバスがほとんど居ないので鯉やヘラブナはもちろんだが、モツゴ、モロコ、オイカワ、メダカ、雷魚、ボラ(荒川から上がってくる)、カメ、など大小さまざまな生物がまだまだ健在だ。
 目当ての場所はすでに背丈ほどもある夏草で覆われていた。河川工事で、一時期見るのも辛くなるほどズタズタにされたが自然の力はすごい。水際も葦とヨシが復活し、ヨシキリ(鳥)のキョロッキョロロッという鳴き声が響き渡っていた。人が分け入った踏み跡がぼんやりと付いていて、それにしたがって水辺に進む。話は逸れるが、こういうところを歩くときは野糞に気をつけなければならない。人は信じられない場所にうんこをする。過去に何度も踏んだ。(ああ、このままウンコ話に脱線、突入してしまいたい! 笑えるウンコネタが喉まで出てきているのに……。? 喉にウンコ……!)

 体長60Cm、10匹ほどの鯉が同じ方向を向いてかたまって泳いでいる。前述したようにここも“見沼用水路”からの流れ込みがあるので、大口を開いて餌を待ち受けているといった態勢である。わたしが真上から覗いても逃げもしない。わたしの今日の目的はタモロコなので、こいつらは邪魔だ。竿1.8m、糸1号、針はハヤ0.5号といった仕掛けなので、背ビレにでも引っかけようもんならひとたまりもない。竿ごと持っていかれるだろう。
 しかしだ、人間というのは何と矛盾に満ちた生き物なのであろうか。そうしてはいけない、そうしたらすべてが台無しになってしまう、と分かっていながらわたしはパンを指先でこね、釣りばりにからめて彼らの鼻先に流していたのだった。どうせ食うものか、という気持ちがあったのがいけなかった。魚は「反射食い」というのをするのだ。すなわち、目の前に流れてきたものは一応吸いこんでみるのだ。嫌なら吐き出せばいいだけだからね。
 
 1.8mのカーボン竿はUの字になった。わたしは竿を折りたくない一心で竿を立てるのを止め水平に持った。そして先端をたぐり寄せて道糸を直接持った。しかし、すべてはここまでだった。所詮、勝負ができる相手でも仕掛けでもなかったのだ。あっさりと糸は切れ、馬鹿鯉は水中に泥の噴煙を残して去っていった。この間5秒である。わたしにとっては5秒間のエクスタシーだった。興奮のあまり、かなり強力な糞意をもよおしたが「野糞をするのにもいろいろ事情があるのだろうなあ」などと考えるうちにひっこんでしまった。また大人になった気がした。
 結局タモロコ釣りはどうなったか……@生ミミズが調達できなかったA場が荒れてしまったBまた微糞意がやってきた、、という理由でボウズであったのだった。(常備している釣り餌に“ミミズゼリー”というのがあって、チューブに入ったミミズ味のコンニャクみたいなものだが、こりゃダメだね)

 帰路、「見沼自然保護区」に寄る。野バラか茨(イバラ)か分からないが、白い小さな花が満開。オオタカは見られなかったが、キジを何匹も見かけた。キジ、キジ……“野糞をすること”を別の言い方で“キジウチ”ということを突然思いだした。5秒でキジウチをするのも、これまたエクスタシーだろうなあ……。脳梗塞でもおこしているのだろうか、思考回路が混線する今日この頃。




              




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