9月23日(木)   雑多な一日

 しばらく放っておいたDT50という50ccのオフロードバイク、バッテリーがすっかり上がってしまった。古いバイクなのでどうしようか、と思っていたのだけどヤフーのオークションで新品のバッテリーを手に入れた。
 で、今日は充電のために秩父あたりまで走ろうかと早起きをして準備していると、妻も起き出してきて「でかけるの?」と言う。
「いっしょに遊んでくれないと、一緒にいる時間がどんどん短くなっちゃうよ」などど、まるでぼくの老い先が短いことをするどく指摘するようなことを言うので、少しウッと涙腺がゆるみ、仕方がないので遊んでやることにした。
 秩父はヘビーな気がしたので、彼岸ということもあり大宮市民霊園まで妻はカブで、ぼくはDTで走ることにした。が、墓参りと言うわけではない。
 大宮市民霊園には毎日「市場」が立つのだ。近隣の農家が新鮮な野菜を持ち寄って販売しているのだけど、キチンと建物もあるしパートタイマー風の主婦らしき人たちもいる。
 中にはなかなかの美人の奥さんもいて……話が逸れそうなのでこの話はやめる。
 市場は本日、谷中生姜だらけでありました。その他にも朝露にまだ濡れたままのトマトや茄子やししとうがいっぱいで、墓参りの客を当てこんでか普段よりさらに瑞々しい感じなのでありました。昼飯に炒めて食べるべく多量に買い込んでしまった。
 DTの充電のために少しは走らなきゃならんので、わざわざ遠回りをし浦和の薬草園に立ち寄る。薬草園なんて古風なことを……ハーブ園であった。
 市営なのだけど普通の道路脇にあるので、注意して見ないとそこがハーブ園だとは気がつかないほどの規模のものではある。けれどボランティアの協力もあってよく手入れされていて、ハーブの種類も数十種類はある立派なものなのだ。
 丁度いい季節らしく、園は今を盛りの可憐な花たちで埋め尽くされていた。
 そこで妻はひらめいた、らしい。知人の水彩画がヤフー・オークションで飛ぶように売れているのを思い出したらしく、こう言ったのだ。
「私、花とか植物の絵を描いてオークションで売ります。私、大金持ちネ、うふふふ」
 一応、妻は美大の日本画科を出ていたりするので、自信はあるらしいのだ。
 というわけで、午後にはもう一度その薬草園、もとい、ハーブ園に来て花の写真をたくさん撮ることになってしまったのだった。
 一旦帰宅し、新鮮野菜づくしの昼食をすませ、再度ハーブ園に向かう。間違いのもとはカブのボックスに捕虫網を積んだことだった。
 現地に着くと、妻はデジカメ片手にルンルン気分で、ハーブ園の隅から隅まで観察して 歩き回っておりました。そしてまた言いましたネ。
「私、昆虫の絵を描いて売ります。私、もっともっと大金持ちあるね、ぶふふふ」
 当然虫捕りは夫の仕事である。熊蜂、コスズメ蜂、オオスズメ蜂……、結婚して20年
妻がそんなに蜂を好きだったとは知らなかった。捕まえたそれらの蜂をガラス瓶に入れて
キャーキャー、ウットリ、キャーキャー、ウットリを繰り返す。近くにいた子供たちに無理矢理それを見せつけ「恐いでしょう、恐いよね〜、恐いと言え」と脅す。エトセトラ。
 結局、花の写真は2〜3枚撮っただけで、残りはピンぼけの蜂の写真が数十枚。
「あのさあ、大金持ちはどこに行ったわけ?」
 呆れた私の質問に妻は歌を歌った。Where have all the flowers gone〜♪、「花はどこへ行った」という歌だった。う〜ん、頭がいいのか悪いのか。
 雑多な1日ではあったけれど、おかげでDTはバッチリ充電されたようであった。
 夫婦で走った距離、きっちり50q。




                      






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