俺の名は「白雪仮面」というのだぞイ
まいったか?解けちゃうぞ〜!
自分が解けてどうするんじゃい!!

雪(ゆき)


 私が生まれ育った鹿児島、いくら南国と言っても冬は霜もおりますし氷も張ります。
 しかし「雪」となるとなかなか降らず、一冬に1回か2回、それもチラチラとするだけで積もることは本当に珍しいのです。私が子供の頃は、1〜2cmも積もろうものなら孟宗竹の先を火であぶって曲げたスキーでキャーキャー言いながら滑って遊んだものでした。
 そんな風ですから、私はひときわ「雪」に対して憧れが強く「雪の結晶」とか「かまくら」などと耳元で囁かれると「あなたのためなら何でもしますわ」状態なのです。
 小学4年の冬、そんな鹿児島に大雪がありました。なんと30cmも積もったのです。私は学校から帰宅すると、大急ぎでスコップを持って田んぼに走りました。そして非力ながら集められる限りの雪をかき集め、かまくら作りに挑戦したのです。
 かまくらの中ではローソク1本で暖かいという話を何かの本で読んだので、それを試してみたかったですし、中でみかんを食べたり甘酒を飲むというのも魅力的でした。
 かなり頑張ったのですが、出来たかまくらはしゃがんだ私と犬1匹がやっと入れる大きさにしかなりませんでした。が、それでも嬉しくて出たり入ったりして遊んでいました。
 縮こまってではありましたが、もちろんみかんも中で食べました。とその時です。何者かが非情にも私のかまくらの上にドスンと飛び降りて?きたではありませんか。そして一瞬の内に潰されてしまったのです。
 そうなのです、私は大きさを稼ぐため1.5mほどの土手の際に雪を盛り、そこに横穴を掘って「かまくらもどき」にしていたのです。
 夕方、犬の鳴き声で気付いた母親が探しに来るまで、私は雪に埋もれて気絶していました。目覚めた時でさえ「ローソク、ローソク」と叫んでいたそうですから眠っている間は本当のかまくらの夢をみていたのでしょう。遭難しなくて良かった、良かった。
 後になって判ったことですが、飛び降りてきたのは姉でした。私が部屋の中で釣りざおを振り回し、つりばりで姉のまぶたを釣った事件があったのですが、その仕返しだったそうです。こういう些細なことから家庭内殺人が起こるのかも……んな訳ないか。