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ファイアーマン太郎!
2015年07月22日(火)「 スカポン事件簿 B 」

「何事も経験だ!」と父が言うので、私は「ああ、この人は暑くてもう何もかも面倒くさくなっているんだな」ということが分りました。それと「今回はお前が書け」と暗に脅しているのも分りました。父は外面(そとづら)だけの人です。

 父は長男のソラを溺愛していて、マジで家屋敷を相続させたいと考えているようです。私は隙有らばカレーや筑前煮を一鍋全部食べてしまうようないけない子なので、父はまるで妾の子をいじめる正妻のような目つきで私を安全靴のつま先で蹴ったり踏んだりします。
 嘘をいうのは面白いですが、飽きたので止めましょう。
 そうそう、このコーナー(?)はどうせみんなドヤ話のようですから言いますけど、実は最近ビーグル犬の集まりがありまして、そこへ本物の鉄砲撃ち(ハンター)がやってきまして、私が一番猟犬に向いてるので譲って欲しいと交渉があったらしいのです。
 金になるなら何でもする父は、ニッとしたらしいですが、母が「ハンターーーーチャンス!」とか訳の分らないことを叫んでその場を乗り切った、と後で聞きました。
 今回のことでハッキリしたような気がします。父は思っていた通り、やはり本当の父ではないようです。


 さて「今日の事件簿」です。
 父が午前中に明けで帰宅し「暑い暑いラスベガス〜、より暑いよヨリヨリ」と歌うように言いながら、庭のトンガラシ連中に水遣りを始めました。ラスベガスはどうか知りませんが確かに死ぬほど暑くて、わたしたち犬神一族はもうへばっています。なのに父ときたら南国生まれの血のせいか、それゆえ毛穴が他人の3倍ぐらいあるせいか、暑さにだけは滅法強くてまた歌っているようでした。
「暑い暑いラスベガス〜、より暑いよヨリヨリ〜♪」

 その時です。
「ボッカーン、シューーーーーー!、盆〜ン!シューーーーーーー!」
 ソラ兄も、母も、もちろん私も腰を抜かし、どこへ逃げていいのか右往左往。ものすごい爆発音と白煙だったのでした。
 近所の家々の窓がいっせいに開き、人々は口々に何? 何? と叫んでいます。そして息を呑むような一瞬の沈黙があり、その向うからかすかに人のうめくような歌声が聞こえてきました。
「すごいすごいラスベガス〜、よりすごいよヨリヨリ〜」
 ラスベガスがどうしたというのでしょう? 父とラスベガスの関係やいかに……。


 父は本当は腹の底から恐ろしい男かも知れません。歌いながら爆発物に近づき、デジカメでバシャバシャと写真を撮り、科捜研の真似をしていました。そして右頬で少し笑い、おもむろに110番したのです。
「○○○の小林ですがのー、隣の敷地でやっているタコ焼き屋の裏で何のガスか分りませんがのー、たった今爆発があった訳ですよ。ものすごい音でしてのー、火が出たりしやせんかとヒヤシンス、気が気じゃないわけですよー。営業許可を取ってやってるのかどうかもこっちはわからんよってのー、まひとつ調べに来てくれませんかのー」

 私は知っていました。ついさっき、父が母に「ああ大丈夫、ビールサーバー用の二酸化炭素ボンベが破裂しただけ」と言っていたのです。つまり、たいしたことが無いのをしりつつ、事を大きくしようとしているのを私は知っていたのです。そっちの方がヒヤシンスですよまったく。
 週に一度ぐらいしか営業もしていないのに、たまに営業していると思ったら親族の飲み会だったり、そしてとにかく深夜までうるさくてかなわない。父が隣のタコ焼屋を良く思っていないのは、よく知っていました。何かのきっかけで絶対営業停止に追い込みたいと思っているのは明白だったのです。

 10分後、パトカーと消防車とバイクの警官がサイレンを鳴らしながら総勢7〜8人も集まり、辺りは騒然となりました。しかし父は臆することなく堂々と対応していました。
「はあ、最初プロパンガスかと思いましてのー、ラスベガスでも見たことありますでのー、怖くて怖くてのー。ヨリヨリ〜」
「何ですか?」
「火は出ませんかの? もう大爆発の危険はないのですかのー? こんな暑い日が続いているっちゅうのにガスボンベを野ざらしにしとくなんて非国民ですがのお、近所の迷惑をまったく考えておらん。営業停止もんですのお、国外追放でもいいぐらいですのお、ヨリヨリ〜」
「まあまあ、ご主人落ち着いて落ち着いて、ヨリヨリ〜」

 面倒になったのでもうまとめに入りますが、父は結局負けましたのう。炭酸ガスは危険物として扱う義務は無く、よって管理不十分の罰則もないのだそうですのう。まあ父はかわいそうでしたが一件落着で処理されてしまったのでした。
 それにしても、暑い暑いラスベガス〜より暑いよヨリヨリ♪〜
 
 スカポン探偵団、キラでした〜