3月27日(土) お花見
 旧浦和市の、とあるキャンプ場である。
 ふと考えたのだけど、私は残念なことに未だ桜の下で、いわゆる「飲めや歌えや」のお
花見というものをしたことが無いような気がするのだ。
 そういうことが嫌いな訳ではない。これは確信をもって言える。どちらかと言えば好き
な方である。けれどなぜか50歳の今まで記憶にないのである。
 鹿児島生まれの私ではあるけれど、もしかして鹿児島には花見の習慣が無かったのじゃ
ないか……とも考えたがそんな筈もない。
 さてここの桜は大木を3本寄せ植え?にしてあるので、満開ともなると見事である。す
ぐ隣の見沼自然公園の方に花見客は行ってしまうので穴場でもある。
 私と妻は桜の下のベンチに寝転がって、桜のてっぺんにやってきたメジロの群れがニギ
ニギしく蜜を吸い、一時も止まることなく枝から枝へ飛び回るのを見ていた。
 やがてメジロたちはヒヨドリの群れに追われ、ヒヨドリたちは狂騒の果てに下にいる私
たちの上に花付の小枝を落として去っていった。
 しばらく体調を崩して臥せっていた妻にも笑顔が戻り、やっと遅い春がやってきたよう
な気がする。
 50mほど離れた所にわずか1組の家族連れ、20歳過ぎぐらいの娘がいるところを見
ると、父親も母親もそれ相応の年齢であろう。小さな七輪を囲んで、何かの肉を焼いてい
るらしい香ばしい匂いが漂ってきた。遠目ではあるが父親と母親は、わざわざ缶ビールを
コップに注いでチビチビと飲んでいるように見受けられた。上品で実に落ち着いた大人の
お花見である。
「う〜ん、渋いのう。七輪ってえのがいいのう。ちょっと真似してみたい雰囲気じゃあ。
必要最低限イズ ベストじゃのう」
 私は日本昔話の常田富士夫さんになりきって、うなってしまった。
 ドンチャン騒ぎの「お花見」は、きっとまだ当分経験できそうにない。
フィールドノート 2004
お花見じゃ
花見じゃ
花見じゃ