パリ 3人目は前田で決まり!

たった一人で抜け出す

目的の有る人の顔だ

ゴールの瞬間

166Cm44Kg

ポーズがぎこちなくていい
 
2024年01月28日(日)「前田穂南さんに感動した」

 とてもいいものを観させてもらった気分だ。自分自身に負けない人のレースとはこんなにも胸が熱くなるものなんだなあ、としびれた。
 大阪国際女子マラソンの話である。パリ五輪、女子マラソンの出場権をかけた大会でもあった訳だが、設定記録の2時間21分41秒に合わせたスピードで走るペースメーカーたちを抜き去って、常識では考えられない早い段階で勝負に出る選手をわたしは初めて見た。22Km付近で仕掛けるのは、後半ばてる危険を考えれば相当にリスキーだ。なのに彼女はさらにペースを上げて、2位以下をどんどん引き離してゆく。わたしも「最後まで持たないのじゃないか」と不安になった。そして、だからこそ最後まで見届ける気持ちになったのだ。

 給水を2回失敗するなど、まったくハラハラさせる。もう見ていられないぐらい胸がつまった。35Kmを過ぎたあたりからさすがに少し口が開いたが、小声で何か叫んでいるようだった。自分への「喝」だったのだろう。心臓はすでにバクバクのはずである。しかしペースが落ちる気配はない。2位グループとはすでに距離が離れているし、設定記録は楽にクリアできるのは本人も分かっているはずだった。しかし彼女はペースを落とさない。心技一体の状態なんだろうな、とわたしは思った。
 そしてわたしは気づいたのだ。彼女の目標は「順位」でも「オリンピック出場権」でもなく「タイム」そのものなんだと。タイムトライアルなのだから当たり前だが、1秒でも早くゴールするためだけに走っているんだなと。強い人だ。
 高橋尚子さん他の解説陣もこの辺りからイケイケの応援団と化した。

 途中でエチオピアの選手に1位は譲ったが、それに付かず離れず走り続けたのも良かったのだと思う。2時間18分59秒でゴール、19年ぶりの日本新記録だ。自己ベストを4分近く縮めている。ちょっとね、胸が熱くなりましたね。思わず「ブラボー!」とか言っちゃいましたネ。
 3月10日の「名古屋ウィメンズマラソン」でこの記録以上のタイムが出なければ、前田穂南さんが東京オリンピックに続く2回目の出場になる見込みだ。東京大会では33位と悔しい結果だったようだが、3年前とはすでにモノが違う。出し切る術を知った人間は強いのだ。出し切ったことが無いわたしが言うのだから間違いない(?)。

 いいなあ、うらやましいなあ、パリまで応援に行きたいなあ。(そっちかい!)
 小林 倫博