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レクレーション! 死語?
 

満面の笑顔

nice to meet you

カジキマグロのバジル焼き
2019年07月18日(木)「強運×2の日」

 20歳年下の上司“ネモッちゃん”がフライフィッシングをやってみたいというので、取り敢えず管理釣り場「釣りパラダイス」にお連れすることにした。3月末の鹿児島行き以来のレクレーション大会(笑)である。
「フライフィッシングはとにかくラインを飛ばす事自体がむずかしいのだから、万が一にも魚が釣れたらなんて絶対期待しないように、いいね!」
「イエス、サー!ほい、サー!」
 どっちが上司だか分からない。

 ず〜っと雨続きだったにもかかわらず、昨日の夕方には薄陽が射し、今日もなんとか曇り状態で夕方まで持ちこたえられそうな様子である。わたしが1週間前から念を出して祈ったお陰だろう。まあ昔からそうだが、わたしはここぞという時は強運である。どっちでもいいんだけどなあ、と少しでも気の弛みがある時はたいがい雨だ。マイナスの念というのが出るのかもしれない、ハハハ。

“釣りパラ”に着くと若い場長が気の毒そうな顔をして出迎えた。
「フライですか? 千葉のトラウト(鱒釣り)は6月で終わりなんスよ。水温が他所(他県)より上がるんで全然釣れなくなります。良くて朝夕の30分ぐらいですかねえ。いやいや、やってもいいんですよ魚は居るんですから。でも言っちゃあなんですが今日は特に最悪、絶対釣れないと思いますよ……」
 竿振り練習が目的だから……とはさすがに言わなかったが、わざわざ来たのに諦めて引き返す訳にもいかない。すると1時間¥1500という特別コースをその場で作ってくれて、その後は1時間¥500の追加料金でいいという。絶対釣れないから好きな時に切り上げていいよ、ってことなのだろう。
 フフフ、わたしを見くびってはいけないヨ。

 平日ということもあろうが、実際他に客は1人もおらず池は完全に貸し切り状態。これは良かった。
 ラインのセット方法、竿を振る角度、左手のラインの扱い方等々、一応言葉での説明は済ませた。U字形のループを作りつつ、竿を前後に振り、フライライン自体の重さを利用してラインを少しずつ送り出してゆく訳なのだが、なかなかの高等技術だし、そうそう簡単に出来るはずはない。体で覚えるしか方法は無いのだ。

 場長が「今日は特に釣れそうにない日」と言ったにもかかわらず、わたしは竿出し2分後にヒット、その後も2匹、3匹、4匹とたて続けに釣りあげてハナタカ爺さん。ここ釣れワンワンである。確かに反応は鈍いがドライフライならではの反射食いと言うのが有るのである。連られ食いともいう。鱒類の本能を利用した釣り方。バラシも2〜3回有ったから 全然退屈はしなかった。
 ネモッちゃんはズ〜ッとラインと格闘。1時間ぐらい振って少しまともになってきたが、ふと振り返ってみると奇妙なダンスを踊っている。よく見てみると自分の体に絡み付いたラインを窮屈そうにほどいているところだった。おまけに毛鉤が腕の皮膚に刺さっている(痛)。
「後ろでラインがZ形になってるよ、新体操のリボンじゃないんだから」
 ネモッちゃん、少しカチンと来たようだった。

 当然、延長である。1時間30分ぐらいは振っていただろう。
 風のお陰も少し有っただろうか、ラインがスーッとU字形で前に出て、毛鉤が弧を描いて水面にポトリと落ちた。その瞬間だった、水底から突進してきた虹鱒が毛鉤を一瞬咥えたのである。長年バス釣りをやっていたらしいので、合わせの感覚は鈍ってなかったのだろう。鉤は呑み込まれることもなく、下唇にガッチリ刺さっていた。理想的なフッキングだ。
 何から何まで初めてのフライフィッシングで、実際に魚を釣り上るなんて強運中の強運である。腕はまあ……5%ぐらいのもんよ(笑)。
 わたしは一部始終を目撃していたが、面白かったのはその瞬間彼が発した言葉が「あ!」だけだったことだ。しかしこの「あ!」が非常に大きい。これを知っているか知らないかで、男の人生の価値が大きく変わるのである。彼は、もうフライフィッシングから離れることが出来ない体になったと思うネ。

 
 かなり腹が減ったので、横芝光町へ急ぐ。カヌーでよく行く栗山川の河川敷でBBQもどきだ。
 車中、どんなタイミングでそういう話になったかは忘れたが「終わった」じゃなくて敢えて「終わらせた」男女の間の話になった。相手を想うが故のその“決断”は愛より深く、切なくて苦い。男って本当に歌の文句で生きているよなあ。
 
 到着。抹茶を飲んだことがない(いわゆる茶道の)というので湯を沸かして野点をし、柿安の和菓子を多量にご馳走した。
「抹茶はやっぱ嫌いだけど和菓子を食べるのには抹茶がいいですねえ」と訳の分からない感想。その後用意してきた塩麹漬けの鳥胸肉約1kg、豚のバラブロックと野菜を串に刺したもの12本(オイルフォンデュで)、カジキマグロのバジル塩麹漬け2枚、などなど一気に食って果てる(笑)。最近のノンアルコールビールは結構美味いね。

 雷が鳴り始めたのでこれまた一気に撤収。濡れはしなかったが、その直後にワイパーを最速にしても前が見えないほどの集中豪雨にみまわれた。なけなしの2つの強運を使い果たした結末のようで可笑しかった。
 ネモッちゃんを自宅のある成田まで送った後の帰り道、わたしは気持ちのいい疲労感に包まれてクスクス・クスクスと一人で笑い続けた。
 時にはこういうのが無いと、生きていけない。