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Fieldnote 2017 手搾りワインはいかが?

とにかく採りまくる

選別して潰す

ドロ水のようでもある

14リットルはある
2017年08月29日(火)「ドメーヌ小林」

 ワイン用語事典によると「ドメーヌ」というのは……「自分のブドウ畑を持ち、そのブドウを使って醸造をする生産者のこと。家族経営的な小規模な生産者を指すことが多い」とある。
 お? ドメーヌ小林じゃん!

 1年振りのワインの仕込みである。と言うのも、去年は8月末に来た台風9号でほとんどの実が落ちてしまったのだ。
 今年のブドウの出来はここ数年で一番、数も甘さも姿もいい。ワイン用には姿などはどうでもよさそうだが、どっこいそうでもない。きれいな実の方が完熟度も糖度も高いのだ。青い内に虫に穴など開けられた実は、腐ったり傷を治すために成長が遅くなったりする。結果そのまま育ってもあまりいいブドウにならない、とそういう原理なのだ。
 思うに、今年は冷夏のせいで黄金虫などの甲虫類が少なかったのが幸いしたのではないだろうか? 例年ブドウ棚を揺すると50匹ぐらいの黄金虫がボトボトと落ちるのだが、今年はそれも無かった。

 熟し度と休みの関係から今日辺りがラストチャンスだろうと判断した。台風も来ている。
 犬散歩の後、朝の7時半に作業開始。採っても採っても採り切れない。蚊が多いので長袖を着ていたのだが、その暑さといったら腹立たしい程だ。おまけにシャツの中に入り込んだ蟻か毛虫が、右袖の中を肌を噛みながら行ったり来たりする。たまらず着替えたが既に手遅れで赤い斑点だらけ。超痛痒い。
 10時の休憩時に段ボール1箱分を姉貴のところに届けた。姉貴も今、ワイン造りに意欲満々なのだ 。

 黙々と採り続ける。蔓が隣の家まで延びてしまい、そちらにも実がたわわに成っている。留守だったので仕方なく不法侵入してすべて収穫した。申し訳ないので剪定などしてやや時間をロスしたが、こればっかりはやらない訳にはいかない。
 午後2時半から選別・潰し&絞りを始めた。風が出てきて蚊も吹き飛び、多少は気分が上向く。辺り一面ブドウの香り。搾り汁を舐めてみて驚いた。かなり甘い。砂糖の量を少し減らしてもいいかも知れない、などと思案しながらひたすら搾る。腕パンパン。
 終わったのは午後5時半。全部で14リットルの100%ブドウジュースを得た。もっと効率のいい“搾り機”のようなものがあれば……と毎年思うのだがまだ発明に至っていない。ちゃんと搾ればプラス2リットルぐらいにはなった筈だが、もう疲れきって最後はテキトウ。これは南国生まれの人間の性格だネ。
 テキトウついでで考えるのが嫌になり、定石通り10%の砂糖を加えて撹拌、後は発酵が始まるのを待つだけだ。

 様々な要因が重なって、テレビを点けることもスマホを覗くこともなかったため、北朝鮮のミサイルが北海道を飛び越えたという一大事を夜になってから知った。
「ワインなんか作ってる場合じゃなかったなあ」
 と思ったが、かといって何をする? と聞かれても思い浮かぶ事は何も無い。
 ドメーヌ小林、発酵を待ちながら金正恩の真の薄幸を考えた。駄洒落ですね。