Yahoo!JapanGeocities Top
2016年04月02日(土)「 デスノートVSバチノート 」

“2ちゃんねる”の「死んで欲しいアーチスト」というスレに自分の名前が有るのを偶然発見して仰天した。
 合計3回ある。名前だけの記載だ。行状? とか罪状? とかは何も書かれていない。「クソ野郎、死ね!」的な書き込みである。
「嗚呼、とうとうデスノートに書き込まれたか!」とショックを受けたが、“アーチスト”扱いされた点については多少ニンマリである。単細胞だからニンマリしたら何だかすっかり気持ちが楽になって、落ち着いて傾向と対策を考えられるようになった。
 そうなのだ、わたしはスカポン探偵団の団長だったのだ。しっかりせねばならないのだ。
 だから、ここから先は団長の立場にたって鋭く推理してみることにする……のである。

 理由が書いてないということは、つまり「小林ってやつはこんなに酷いことをしやがったんですぜ」ということを広く世に知らしめて、その結果わたしを社会から抹殺しようとたくらんでいる訳ではないようだ。都合のいい解釈のような気もするが、確かだと思う。なら何故書き込みをしたか、おそらくだが「今は善人面していても、少なくてもこの世にひとりはあなたを恨んでる者が居るんですからね(なんで女口調?)」というアピールなのだとは考えられないだろうか?
 いつか必ずわたしがそのスレに辿り着くであろうと信じて疑わず、そうなり易いように“アーチスト”という言葉が入ったスレを探し当てたのだろう。もしかするとスレを立てた本人なのかも知れない。周到な計画と執念、まさにわたしはおびき寄せられた“獲物”といったところだろうか。気の遠くなるような遠大な憎しみの臭いが漂っている。

“括り”から考えても当初わたしの昔を知る者の仕業と推測したのだが、調べてみると書き込みは先月の10日、13日、21日なのである。
 現在はただの真面目で素朴な一老人なので、思い当たる節など皆無である。となると……やはり過去へ遡って推理すべきであろう。

 こういう時の定石は消去法である。で、20代まで遡ってわたしを恨んでいそうな奴をざっと数えてみた。なんと全部で12人もいた。またまたクリビツテンギョウだ。1ダースだよ(ダースって言葉を久しぶりに思い出したので使ったが、別に茶化している訳ではない)。もちろん男も女もいる。真実もあれば濡れ衣もある。
 思い出す度に腹立たしい濡れ衣の代表はこれだ。40年ほど前、わたしはある女性と仲良くなった。ところが、彼女にはその時点ですでに別の恋人がいたらしいのである。で、わたしの方は1ヶ月も続かずに別れてしまったが、後になって色々教えてくれる人がいて事の顛末を知ることになった。なんとだ! その恋人が女を横取りされたと悲観して、あろうことか断食自殺をしてしまったらしいのである。半年ほど後にアパートで餓死死体で発見されたが、方法が方法だけに知人友人みな重い気分になった。
「小林に対する無言の抗議だな、直接は言えなかったんだなあ、呪われろ呪われろ死んでしまえ」とわたしは仲間たちから責められ、かつ面白がられたが、それは事実とぜ〜んぜん違うのである。
 餓死した男性も知人ではあったが、彼女との関係などわたしは全く知らなかったし、付き合っている間に気付くことも彼女から告白されることもなかったのである。不可抗力なのだ。
 なので事実を知らされた後も、まあわたしも独身だったこともあって何のやましさも罪の意識もあまり感じなかった。普通に出会って普通に別れた感覚なのである。さらに彼女には悪いが、こっちが二股かけられていたわけだからなあ。ところがだ、それがまた大いに仲間たちに反感を買ったりしたようだった。わたしはそれがもとで職を失った。わたしにとってはまったく散々な話なのである。
 濡れ衣とはいえ、怨念は何回でも別の人に乗り移るから、乗り移られた人がつい最近に2ちゃんねるに書き込んだ……う〜ん十分有り得る話ではある。

 イカレポンチ(この言葉も久しぶりに思い出したので…)もいた。とにかくわたしのことが嫌いらしくて、やたらめったらつっかかって来るのである。虫が好かないというやつだ。あること無いこと騒がれて、社会的にも多大な迷惑を被った。一応部下であったが、わたしが職場に模造刀を隠し持っていて、人前で抜いてみせたり夜な夜な居合い抜きに興じていると上部に妙チクリンな報告書を出したりするのだ。まったくバカだ。そういう面白い奴がいるのならわたしの方が会ってみたいよまったく。
 こいつのせいで本部長譴責まで受けて減給処分も経験した。管理不十分という訳だろう。
 しかし、まあこいつに関しては藁人形に釘を打って結果末期癌にしてやったのでおあいこである。その後もしぶとく他所でイカレたことをしていると噂で聞いたが、もう2年経つから生きてはいないだろう。天罰というものである。そうそう、わたしは自分に呪術の能力があるのをこの時知ったのだった。

 とまあひとつ一つを語り始めると際限がないが、どれを取ってもまあありふれた…とまでは言わないが世間的に見てもそれほど特別でひどいものでもない。60年以上も生きていれば大なり小なり誰にでもあることである。
 そう考えると“死んで欲しい…”と書かれたことに段々腹が立ってきた。アーチスト扱いされて喜んでいる場合ではないのである。早急に対抗策を練らねばならない。防御は最高の攻撃である……あれ? 攻撃は最高の防御である……だっけ?
 わたしは1冊の真新しいノートに12人の名前を丁寧に書き込んだ。そしてノートの表紙に「バチノート」と大書きした。
 ノートに名前を書き込まれた者には、バチがあたる訳である。他人の死を願うような奴にはバチが当たればいいのである。
 フフフ……フフフ……フフフフ。でも……ちょっとダサイ?