ドクターXの人気にあやかったということは……絶対無い
2014年10月18日(土)「 ドクターイエロー」

 徹夜明けの10時21分、わたしと仲間の齋藤氏は24分発の東京モノレールに乗るべく、天王洲アイル駅の上りホームに立っていた。防風壁のほんの5メートルほどの隙間が透明アクリルになっていて、そこから新幹線の高架橋が見えるのだ。
 徹夜明けだから二人はただもうぼんやりとしたボンクラ脳味噌ではあったが、遥かな高架橋の上をひときわ鮮やかな黄色い列車が右から左へ走って行くのが見えた。
「黄色い新幹線が走っているねえ」
「確かに黄色いねえ」
「黄砂の季節じゃないよねえ」
「それは春先だねえ」
「あれはなんだろねえ」
「バナナじゃないねえ」
 のんきにそんな事を言っていたので、写真を撮れなかったのだ。だからこの話、いまいち信憑性に欠けるのだが、わたしは確かに真黄色の新幹線を見た。神に誓って言う。私はドクターイエローをこの眼で見たのだ。

 ドクターイエローというのは走行系の機器点検をするために走らす、テスト用の新幹線なのだという。二人は歳の割には世間の面白話題に明るいつもりだったのだが、わたしも齋藤氏もそれをまったく知らなかった。何とも悔しい次第。
 なかなかお目にかかれないものらしくて、見られた者にはきっと幸運が訪れるなんてWeb上には書いてある。そんなバナナと思っていたが、事実は都市伝説より奇なり、なのである。
 事実、そのあと新橋駅前で買った「第61回 東京都宝くじ」で一等の3000万円が当たってしまった。

 な訳はない。当たってたら今ごろカナダ移住の手続きに走り回っているところだ。
「そういう嘘を時々つくからなあ、ドクターイエローの話も怪しいもんだ」と言うなかれ。
 写真が有ればいいんだろ〜生写真が有ればいいんだろ、ちくしょう。

 かくしてジジイは今日もパパラッチ。お後がよろしいようで。






キイロヒラタカゲロウ?

フタスジモンカゲロウ?

こいつだ。コカゲロウ

これは違う。ウスバカゲロウ
2014年10月20日(月)「カゲロウを見た」

 夕方の犬散歩でカゲロウを見た。フワフワと目の前を横切ったので素早く手を出してつかんだのだ。最近は老眼がすっかりすすんでしまい蚊もなかなか殺せないが、やっぱりカゲロウの動きは若干鈍いのだろう。
 わたしは興奮して妻に言った。
「これ……カゲロウだよ。カゲロウってわかる? ウスバカゲロウやクサカゲロウじゃないんだよ。ほら、ちゃんとした渓流にいるやつだよこれ。ということはつまり、近くにまだ俺が知らない水の綺麗な渓流があるってことじゃないか? 何か近所で、昔この辺に川があったとか聞いたことない? これ、おそらくさコカゲロウっていう種類だよ!!」
 わたしは川とか池の話になるといっぺんに子供になってしまうようだ。それもかなりカルトな趣味を持つ系のね。
「スカポン探険隊で捜してみたら?」
 妻はにべもなく言った。
 スカポン探検隊ね! 懐かしいねえ、それいいワ!

 近くに村田川が流れているが、農業用の用水路だ。鯉もオイカワもくちぼそ(モツゴ)もいるには居るが、お世辞にも水が澄んでいるとは言い難い。
 ただ……、まだ1度も足を踏入れたことがない場所があるにはある。大椎城跡の崖の下に当たる場所に、チョロチョロと流れる小川があるらしいのだ。タナゴを求めて村田川の源流を探した時に噂を聞いた。夜などはイタチに襲われたらしいヤマドリの断末魔の叫びが聞こえたりする。マムシが絶対いそうだ。
「以前は川海老がいっぱい採れたよ。沢蟹は今も時々土手を登って上がってくるねえ」らしいのだ。

 いずれにしても雪が降る前に解明せねばなるまいてのう。竹藪を鉈やノコギリで伐りながら崖を降りて行かないとたどり着けないらしいが、きっとそこにはカゲロウどもに守られた里見家の埋蔵金が……すぐ欲に目が眩んでしまうなあ、このじじいは。

追記:泥沼や湿地に生息するカゲロウというのも居るらしいことが後でわかった。オイカワが盛んにライズしているところを見ると、村田川も大いに怪しい。
 埋蔵金で川の一区画を買い取って、釣り堀経営なんてのも悪くないねえ。
 目出度えなあ……、脳味噌がさ。





2014年10月21日(火)「 発芽率 」

 職場の仲間のひとりがダウンしてしまった。わたしより10歳も若いというのにだ。深刻な状況なので復帰はむずかしい。おそらく人員補充もすぐにはかなわないだろう。
 で、10日間連続で働いて1日休み、そのあとまたまた8日間続けて働いてやっと1日休み、なんてことになっている。
 定年後は毎日が日曜日だと思っていたのに、毎日が月曜日だ。あ? 別に火曜日でも水曜でもいいわけで、木曜でも……ケッめんどくさ。
 で、今日はついにそのたった1日の休日だ。

 雨である。カヌーに一番いい季節なのになあ。夜明け前に栗山川におもむいて、夜明けと同時に漕ぎ始めるというロマンチックな計画はなかなか実現しない。12月近くなると、鮭の密猟者と間違われるからあまり行きたくないのである。
 仕方が無いので、種取りに励むことにした。トウガラシ類が見事に完熟し真っ赤になっている。カラカラに乾いてしまったものもチラホラ出始めたから、もう十分完熟だろうと思えた。丁寧にていねいに採取した。集中すると独り言が出るのだ。

「今年はプランター植えの方が好成績だったからなあ、来年はもっと大々的にやりたいものだ。島トウガラシがダンゴ虫にやられて躓(つまづ)いたけど、まあハラペーニョで持ち直したっていう感じだなあ。ハバネロもまあまあだった。この2つは越冬させて来年の5月ぐらいには早々と収穫が出来たらいいなあ。
 種、種、種と…混じっちゃたらだめですよー、なんちゃってね。種なあ、もう俺には種なんかないんだろうかなあ。上原ケンって70何歳かで子供ができたんだったか? やるもんだねえ。発芽率抜群!なんちゃって、ガハハ。そうだそうだ、会社のユカリンはシングルマザーだってことだけど、誰の種なんだろうかなあ。あ!種なんて言っちゃって下品だわ。こんな下世話なことが気になってるようじゃ俺もまだまだだなあ。でもやっぱり気になるよなあ。イイ女だもんなあユカリンは。小林さん、表向きだけでいいんです。この子の父親になってもらえないでしょうか?なんて言われたら、分りましたなんて言っちゃいそうだわ。そうだこんなこともあったぞい、思い出した思い出した。ユカリンの子供は誰の子かでみんな騒いでいたころ、ユカリンが小林さんと集団お見合いをする夢をみたんですよハハハハ、なんて言ってたよなあ。あれはなんだったんだろうなあ。もしかしてだけど〜もしかしてだけど〜♪ お見合いしようと誘ってたんじゃないのか〜♪っと。あれ? 爪の生え際が超痛え。うっ、ハラペーニョの汁が目に入っちまったぜ。うわ! 乾いてるから油断した、ハバネロやばい。爪が痛え、あ、真剣に、まじめに愛を貫いたユカリンの反撃だ、罰があたったんだわ、やべえやべえ〜」

 馬鹿だから後で気づいたけど、男の種は発芽率じゃなくて命中率だよなあ。しょうがねえなあ。なんだかなあ。
 チェッ、まだ雨だ。

 





                  






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